【コラム】オリンピック市川大野店はロビン・フッドに転換?

2026年4月、ドン・キホーテなどを運営するパン・パシフィック・インタナショナル・ホールディングス(以下、PPIH)は、Olympicグループを買収すると発表しました。

入札には、PPIHの他、イオンやバローホールディングスなど、合計5社が参加したということから、首都圏に約100店舗を展開するOlympicグループの店舗網を獲得することが、小売の大手企業同士の競争において大きな意味を持つことがわかります。

Olympicグループといえば、市川市内では、JR市川駅の北口、国道14号線沿いで営業していたオリンピック市川店(かつては百貨店の松坂屋でした)が、2026年1月に閉店したことも記憶に新しいですね。

私(市川マーケティング研究所の鈴木雄高)にとって馴染み深いのは、何と言っても、オリンピック市川大野店です。こちらは2026年8月現在も営業中です。かつて南大野に住んでいた時代、大野小学校と下貝塚中学校に通っていたのですが、バスや電車で本八幡や船橋まで出なくても、家電製品(CDラジカセやウォークマンなど)、CD、カセットテープ、時計、靴、ちょっとした衣類、小型の家具やインテリア関連品、カー用品まで買うことができるオリンピックは、自宅から歩いていける「なんでも屋」。

何を隠そう、私が人生で初めてCDを買ったのは(新星堂でも、イトウミュージックシティでもなく)、オリンピック市川大野店なのです。1990年5月5日に発売された、たま「さよなら人類」を買ったのでした【注1】

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その、オリンピック市川大野店も、遠くない将来、姿を消す可能性が高いことをご存じでしょうか?

と言っても、店舗そのものがなくなるわけではないと思われます。

PPIHが3日前の2026年8月18日に公表した「2026年6月期決算業績説明資料」【注2】によると、子会社となったOlympicグループ(98店舗。ペット、サイクルなどの超小型店を除く)の、「全店舗の業態転換を想定」しているとのことです。超小型店ではない市川大野店のような98店舗については、「立地特性に応じて、ドン・キホーテ、MEGAドン・キホーテ、ロビン・フッドへの業態転換を進める」そうです。

▼Olympicグループ店舗の業態転換計画

・1年目:2026年12月~2027年11月に33店舗
・2年目:2027年12月~2028年11月に40店舗
・3年目:2028年12月~2029年11月に25店舗

・MEGAドン・キホーテへの転換 21店舗
・ドン・キホーテへの転換 21店舗
・ロビン・フッドへの転換 56店舗

出所:株式会社パン・パシフィック・インタナショナル・ホールディングス「2026年6月期決算業績説明資料」(2026年8月18日)より作成。

全体の6割弱の店舗を、新業態「ロビン・フッド」に転換するというのは大胆な計画ですね。というのも、ロビン・フッドは、現時点で東海4県(愛知県、岐阜県、静岡県、三重県)に5店舗出店しているだけだからです。これまでのところは各店舗とも業績好調ということです。とはいえ、3年間でオリンピック56店舗をロビン・フッドに転換するというのは、「成功の型」(モデル)が定まっていないであろう現時点で掲げる計画としては、成功が約束されたものとは言えません。でも、勝算があるのでしょう。

首都圏でのロビン・フッドの展開は、12月に予定されている「オリンピック北新宿店」の転換から始まるとのことで、この店舗のビフォー・アフター(転換前、転換後)に注目したいと思っています。

ちなみに、ロビン・フッドは、ドンキ流のスーパーマーケット(食品スーパー)です。もっとも、ロビン自身は、「スーパーみたいで、スーパーじゃない。」と、「さよならだけどさよならじゃない」【注3】のようなことを言っています。

出所:ロビン・フッド公式ウェブサイト https://www.robinhood-food.jp/ 2026年8月21日閲覧

ドン・キホーテでも食品は販売していますが、生鮮食品の扱いは、ないか、あっても豊富ではありません。一方、元々、総合スーパーの長崎屋からの転換店が多かった大型店のMEGAドン・キホーテ(市川市民にとっては、MEGAドン・キホーテ本八幡店がなじみ深いですよね。かつて、長崎屋時代には、本社機能を置いた時期もありました)は、生鮮食品もしっかりと品揃えしています。

これまで、PPIHは、長崎屋やユニーを買収し、ドンキ流の総合スーパー(多層階からなる大型店舗で衣食住に関する幅広いカテゴリーを品揃えする業態。イトーヨーカドー、イオン、かつてのダイエーや西友の大型店がこれに相当)、MEGAドン・キホーテとして再生してきました。

今後、PPIHは、ピアゴ(出店エリアは東海地方)、オリンピック(首都圏)をロビン・フッドに転換していくようですね。

ちなみに、私は、すでにXでは書いていますが、オリンピック市川大野店は、ロビン・フッドに転換されるのではないかと予想しています。

ここで、冒頭の地図(主要道路しか書いていないので、すっきりしています)を再掲しましょう。

オリンピック市川大野店と周辺のスーパーマーケット(食品スーパー)の位置。市川マーケティング研究所が作成。

オリンピック市川大野店の周辺には、スーパーマーケット(食品スーパー)が、あるにはありますが、この辺りにお住まい人が、スーパーマーケットに歩いていくのは、かなり大変です。たとえば、南大野にある「マルエツ市川大野店」や「ビッグ・エー市川南大野店」は、オリンピックから1.0~1.2㎞の距離にあります。「マルエツ高塚店」までは1.4㎞、地図には載っていませんが、ガナーズ通りを南南西に向かったところにある「マルエツ東菅野店」までも1.4㎞程度です。

というわけで、2026年8月現在、確認できる情報から、「オリンピック市川大野店」は、遠くない将来に、「ロビン・フッド市川大野店」(または「ロビン・フッド南大野店」、「ロビン・フッド市川南大野店」など)に転換されるのではないか、と予想しています。

長崎屋、ユニー、そして、オリンピック。PPIHは、力を失いつつある業界の中堅から大手の企業を買収し、試行を重ねながら、かなりのスピードで、店舗を「ドンキ流の●●」へと転換することで再生する、いわば、再生請負人、あるいは、再生工場【注4】ですね。

PPIHは、これまでに様々な新業態を模索してきましたが、失敗が多いことでも知られています【注5】。もちろん、挑戦しなければ失敗はなく、当然、成功もありません【注6】。撤退した中には、「驚安堂」という小型スーパーがあります。小型スーパーの多店舗化を図ろうとする企業は多いですが、「まいばすけっと」を除けば、限定的な成功に留まっています。

PPIHも、かつて小型スーパー網の展開を目指し、頓挫したわけですが、東海地方のピアゴと首都圏のオリンピックを、ドンキ流の食品スーパー、ロビン・フッドに転換し、新規出店にも打って出るという、この新しい動きは、スーパーマーケット業界にとって非常に大きなインパクトをもたらすでしょう。一生活者としても、ロビン・フッドがどのような店舗なのか(まだ未経験なのです)、そして、想い出のオリンピック市川大野店がどうなるのか、大いに注目していくつもりです。


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〈注〉

1.実は、オリンピック市川大野店のチラシで税別価格(777円)を見て覚えており、ぴったりその金額を持って店に行ったのですが、レジでの会計時に、消費税(3%=23円)分が足りないことが発覚し、同行したクラスメイト(その日、彼はロッテの板ガムを買ったはずです)に23円を借りて、無事、CDシングル「さよなら人類」を買うことができたのでした。オリンピック市川大野店での、このエピソード、一生忘れないと思います(ストリーミング時代には、こういった「購買経験」「顧客体験」は生じづらいでしょうね)。ちなみに、せっかく買ったCDですが、自宅のリビング・ルームにあったステレオのCDプレイヤーでは、8cmのCDシングルを再生できず、聴くためには「8cmCD再生用アダプタ」なるものを使用する必要がありました。アダプタを購入するまでの間は、ラジオ番組で流れた「さよなら人類」を録音したカセットテープで聴くしかなかった、ということまで含めて、1990年(36年前)の出来事を今でも鮮烈に記憶しているのは、それが中学2年生という多感な時期のCD初購入だったこと、消費税分を持ち合わせていなかったこと(購入時の落とし穴)、アダプタがないと聴くことができないということを知らなかったこと(購入前の落とし穴)など、珍しい経験がいくつも重なっているからかもしれません。

2.株式会社パン・パシフィック・インタナショナル・ホールディングス「2026年6月期決算業績説明資料」(2026年8月18日)
https://ppih.co.jp/ir/library/earnings/pdf/PPIH_FY2026_Q4_Presentation_J.pdf

3.「さよならだけどさよならじゃない」は、やまだかつてない WINKが1991年に発表した曲です。

4.かつて、プロ野球の野村克也監督は、全盛期を過ぎて力が衰えてきたと思われるベテラン選手をトレードなどで獲得し、代打、中継ぎ、守備位置のコンバートなど、従来と異なる起用法で、あるいは、技術的な助言をすることで、華麗に復活させる、ということを、数多く行いました(Wikipediaで「野村再生工場」内の「野村によって再生された主な選手」を見て、その多さに改めて驚きました)。

5.PPIHの挑戦の中でも、強く記憶に残るのは、「パワーコンビニ情熱空間」です。他には、「エッセンス」も忘れられません。前者はドンキ流コンビニ、後者はドンキ流ドラッグストアでしょうか。本編で触れた、ドンキ流の小型スーパー「驚安堂」も含め、様々な業態を展開したいということがよくわかります。なお、現存する「情熱職人」は、おそらくドンキ流の「ワークマン」だと思われます。

6.2026年に配信されたNetflixの恋愛リアリティショー『ラブ上等』シーズン2で、「辺土名さん」が「まりりん」に対して、「60歳になっても失敗ばかり」「チャレンジしたら半分成功」と助言していました。私は、挑戦することを億劫に感じる性質で、気が重いと感じてしまうのですが、辺士名さんの言葉を聞いた時、思い切って(小さな)挑戦した直後だったこともあり、「そうですよね、辺士名さん」と思ったのでした。