公開日:2026年4月14日、最終更新日:2026年5月11日

レポートの位置づけ

市川マーケティング研究所の鈴木は、論文やコラムなどの文章を様々な媒体で発表していますが、2026年4月以降、コラムと論文の中間に位置する「レポート」を執筆し、本ページで公開していきます。

当研究所では、レポートを、ニュースや個人的体験からの着想で書くコラムよりは論理的でありつつ、学術論文ほど重厚ではないものとして位置付けています。本シリーズでは、論文に近い形式を採用しながらも、形式にとらわれすぎず、自由に、時には大胆に執筆します。

アイデアを起点としたものや、コラムを発展させたものが中心になります。過去に書き溜めていた文章を整えて公開するものも多くなると思います。査読付き論文のような厳密さを備えているわけではなく、議論の詰めに甘さが残る場合もありますが、「こんな視点もあるのか」と楽しんでいただければ、これに勝る喜びはありません。

レポート一覧(Vol.1~)

レポートの引用について

レポートの内容は、適切な方法で引用していただくことを心より歓迎いたします。引用の際は、必ず出典として「市川マーケティング研究所」の名称と、該当記事のURLを明記してください。

〈論文の参考文献の記載例〉
鈴木雄高(2026)「欲望の生成と沈黙の構造 ― コンプレックスマーケティング試論 ―」『市川マーケティング研究所 レポートシリーズ Vol.12』https://ichikawa-marketing.com/wp-content/uploads/2026/04/20260422_Ichikawa_Marketing_Lab_Report_Vol12.pdf(公開日:2026年4月22日,閲覧日:[閲覧した日付を入力])

〈ウェブメディアなどでの引用時の記載例〉
出典:市川マーケティング研究所
レポート名:欲望の生成と沈黙の構造 ― コンプレックスマーケティング試論 ―

※レポート(PDF)のURLがリンク切れの場合は、以下のいずれかを使用してください。
https://ichikawa-marketing.com/report/
https://ichikawa-marketing.com/

市川マーケティング研究所 レポートシリーズ

Vol.1

パンチくん人気から見えてくる「応援消費」の受け皿設計
― ソーシャルメディア時代における感情と消費行動の接続 ―
2026年4月14日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、市川市動植物園のニホンザル「パンチくん」の人気拡大を事例として、ソーシャルメディア上で生起した共感が、来園・購買・寄付といった行動へと転換されるプロセスを分析するものである。
特に、応援消費の成立に不可欠な「受け皿」と「導線」に着目し、その具体的な機能を整理する。分析の結果、応援消費は偶発的な現象ではなく、適切な設計によって再現可能な消費行動として構築しうることが示唆される。

キーワード:応援消費、ソーシャルメディア、EC、ファン行動、アテンションエコノミー

目次:
1. はじめに
2. 応援消費の発生と可視化された行動
3. 応援消費を成立させる「受け皿」
4. 導線設計とアテンションエコノミー
5. 考察:応援消費は設計できるか
6. 結論


Vol.2

ドミナント戦略の再定義
― 店舗網から都市型物流インフラへ ―
2026年4月14日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、従来のドミナント戦略を店舗網の最適化ではなく、都市型物流インフラの構築として再解釈するものである。これまで否定的に捉えられてきたカニバリゼーションを、即時配送を支える拠点密度や、大型店から小型店へ供給を行う「惑星―衛星モデル」の構築に寄与するものと位置づけ、店舗網の価値を単体の収益性からネットワーク全体の機能性という視点で評価する。その上で、今後のドミナント戦略の焦点は、店舗の量的な拡大にとどまらず、地域需要に応じ、提供機能の質をいかに高めるかに移ると論じる。

キーワード:ドミナント戦略、都市型物流インフラ、カニバリゼーション、惑星―衛星モデル、即時配送(クイックコマース)

目次:
1. はじめに
2. ドミナント戦略の再解釈
3. 新たな展開:惑星―衛星モデルの萌芽
4. 結論と含意


Vol.3

ECにおける「偶然の出会い」は設計可能か
― カタログ型構造の再考 ―
2026年4月14日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿では、ECをリアル店舗の代替ではなく、計画購買に最適化されたカタログ型構造として捉え直し、その特性を検討した。ECは効率性や品揃えの面で優位性を持つ一方、回遊や偶発的接触が生じにくく、非計画購買が発生しにくい構造を有する。この点は制約であると同時に、設計上の選択の問題でもある。
今後のEC設計においては、効率性の追求と並行して、発見の余地をどのように位置づけるかが論点となる。その際、非計画購買を誘発することに長けたリアル店舗の売場構造は、参照可能な視点の一つとなりうる。

キーワード:EC設計、非計画購買、セレンディピティ、カタログ型構造、回遊とジャンプ(ワープ)

目次:
1. はじめに
2. ECの設計思想――カタログ型構造としての理解
3. 予測と偏愛の乖離
4. 回遊の欠如と非計画購買
5. 結論と示唆


Vol.4

リアル店舗における購買体験の時間的構造
― 「4つのワクワク」から考える来店価値の本質 ―
2026年4月16日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

購買行動を効率化の対象として捉える視点が一般化する一方で、リアル店舗での購買体験には代替しがたい情緒的価値が存在する。本稿はこの体験を時間軸に沿って再構成し、「来店前」「店内探索」「購入決定」「帰り道」の4局面におけるワクワク感を分析する。これらは期待、偶発的発見、選択、所有から使用までの移行に伴う情緒的価値が連続する体験として理解される。購買を「点」ではなく「線」として捉えることで、リアル店舗が提供する時間的豊かさの本質的価値を論じ、今後の来店価値設計の方向性を示唆する。

キーワード:リアル店舗、来店価値、購買体験、セレンディピティ、情緒的価値、ワクワク感

目次:
1. はじめに
2. 買物における時間の両義性
3. リアル店舗におけるワクワク体験の4局面
 3-1.来店前のワクワク――期待と予感
 3-2.店内探索のワクワク――偶然的発見(セレンディピティ的体験)
 3-3.購入決定のワクワク――選ぶ喜び・決める喜び
 3-4.帰り道のワクワク――所有と使用のあいだ
5. 購買体験を「線」として捉える意義
6. 結論


Vol.5

買物困難とは何か
― 概念の拡張と売場設計への示唆 ―

2026年4月16日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、「買物困難」という概念を再検討し、従来の空間的アクセスの問題に加え、時間的条件および売場内環境に起因する困難を含む多層的な構造として捉え直すことを目的とする。特に、来店後に生じる感覚的・認知的負荷に着目し、これらが従来の統計や政策において不可視化されてきた点を指摘する。そのうえで、買物困難を空間・時間・身体/認知の三軸で再整理し、それぞれをロジスティクス、サービスデザイン、ユーザーエクスペリエンスの課題として位置づける。さらに、従来の非計画購買を志向した売場設計との関係を踏まえ、両立に向けた売場設計の方向性を提示する。

キーワード:買物困難、売場設計、非計画購買、合理的配慮、感覚過敏

目次:
1. はじめに
2. 従来の買物困難――空間軸に基づく定義
3. 売場内における買物困難――見えない障壁
4. 買物困難の再定義――三つの軸で捉える
5. 売場設計への示唆――設計思想の転換と実装
 5-1.従来型設計思想との対峙
 5-2.実装に向けた二つのアプローチ
6. おわりに


Vol.6

Trader Joe’sが「やらない」理由
― 削減が生む価値と小売業への示唆 ―

2026年4月17日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、米国小売業Trader Joe’s(トレーダー・ジョーズ)の事例をもとに、その経営の特徴と小売業への示唆を整理するものである。同社はプライベートブランド中心の品揃えや限定的な商品数、広告やデジタル施策への非依存といった特徴を持ち、「やらない」選択によって独自の売場を成立させている。特にポッドキャストにおける幹部の発言からは、リテールメディアや顧客データ活用を採用しない判断が、コスト配分や店舗体験のあり方と結びついていることが確認できる。本稿では、こうした削減を軸とした経営のあり方を整理し、機能の追加とは異なる価値形成の可能性を示す。

キーワード:Trader Joe’s、削減戦略、プライベートブランド、デジタル非依存、顧客体験

目次:
1. はじめに
2. Trader Joe’sの特徴
3. デジタル施策を採用しないという選択
4. 削減による価値設計
5. 日本の小売業および他業界への示唆
6. 結語


Vol.7

効率性の極大化と可処分感情の争奪
― 国内EC市場における消費の二重構造 ―

2026年4月18日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

国内BtoC EC市場は2024年に26.1兆円規模に達し、物販・サービス・デジタルの3分野にわたって拡大を続けている。本稿はこの市場の量的拡大を前提としつつ、その背後で進む消費行動の質的変化を検討する。物販・サービス・デジタルの各分野を手がかりに、EC利用の基盤にある効率性志向が維持される一方で、領域によっては感情的関与を伴う消費様式が重なりつつあることを示す。これを「可処分感情」という概念で捉え直すことで、コンテンツ消費と関係性への支出が併存する構造を示す。さらに、この変化が分野間の境界を曖昧にし、消費体験の統合を促していることを指摘する。

キーワード:可処分感情、関係性への支出、マイナスをゼロにする消費、消費体験の統合、EC市場

目次:
1. はじめに
2. 効率性の極大化としての物販EC――「マイナスをゼロにする消費」
3. 体験の前売りとしてのサービスEC――リアルとデジタルの補完関係
4. 「可処分感情」をめぐる争奪――デジタルECの質的転換
5. 3分野の境界溶解と消費体験の統合
6. おわりに


Vol.8

地域活動における関与の段階化
― なぜ地域活動は参加しにくいのか ―

2026年4月20日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、地域活動への参加が広がりにくい要因を、個人の意欲や属性ではなく「関与の構造」の問題として捉え直すものである。消費行動との比較を通じて、地域活動ではフィードバックが遅延かつ不明確であること、さらに参加が「する/しない」という二分法で理解されがちなことが、初期関与の障壁を高めている点を指摘する。そのうえで、関与を段階的に設計し、各段階を正当な参加として位置づける枠組みを提示する。これにより、参加の入口を広げるとともに、関与の持続と移行を促す可能性を論じる。

キーワード:関与の段階化、地域活動、参加行動、フィードバック構造、初期関与、関与設計

目次:
1. 問題の所在
2. フィードバック構造の非対称性
3. 関与の二分法とその限界
4. 関与の段階化という設計
5. 初期関与の設計と移行の連続性
6. 結論


Vol.9

投票と購買
― 「選ぶ」という行為の構造的差異をめぐる試論 ―

2026年4月20日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

投票と購買はいずれも「複数の選択肢の中からひとつを選ぶ」という意思決定の構造を共有するが、その文脈的条件は大きく異なる。本稿では、消費者行動論と行動経済学の知見を参照しながら、両者の共通性と構造的差異を整理する。共通の骨格として、五段階の意思決定モデルが両者に適用可能であることを示しつつ、ヒューリスティックへの依存が購買・投票の双方で観察されることを確認する。その上で、両者の最も根本的な差異として「学習の非対称性」を提示する。購買では失敗がフィードバックされ判断の精度が高まるが、投票ではこの回路が構造的に阻害される。この帰結としてDownsの「合理的無知」が生じ、ヒューリスティックへの依存が高まる。さらに「関与の逆転」と「対象の流動性」という概念を導入し、投票行動の特異性を論じる。最終節では、両者が「自己表現」という次元で交わることを示しつつ、「合理的な意思決定」が文脈依存的な概念であることを確認する。

キーワード:学習の非対称性、合理的無知、関与の逆転、ヒューリスティック、対象の流動性

目次:
1. 投票と購買の比較からみえる問い
2. 共通の骨格
3. 学習の非対称性
4. 関与の逆転と対象の流動性
5. 自己表現としての消費と投票


Vol.10

ミッションなき小売の効率化
― 設計思想の不在が生む帰結 ―

2026年4月20日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、小売業におけるAIや自動化の導入を、技術進化そのものではなく、ミッションと設計思想のあり方という観点から捉え直すものである。多くの企業では、何を提供するかという設計よりも、何が技術的に可能かという発想が先行している可能性がある。
こうした前提のもとで、本稿はKahn(2018)が示す小売競争優位の四要素を手がかりに、リアル店舗における人間的接点の位置づけを整理する。また、設計思想を欠いた効率化がどのような構造的変化をもたらしうるのかを検討する。
結果として、リアル店舗においてミッションと整合しない効率化が進行した場合、顧客の来店動機の弱化とさらなる効率化が連鎖し、顧客との関係性や自社の存在理由が徐々に失われていくリスクが示される。

キーワード:ミッション、設計思想、AI化(自動化)、効率化、店舗体験、人間的接点

目次:
1. はじめに
2. 技術起点の意思決定と設計不在の問題
3. リアル店舗における価値軸の再定義
4. ミッションに基づく人間的接点の設計
5. 設計不在がもたらす店舗価値の動態変化
6. おわりに


Vol.11

まいばすけっと躍進の背景を非探索型消費者の視点からひも解く
― 買物を「つまらない」と捉える消費者は何を求めるのか ―

2026年4月21日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、都市部における小型店舗の拡大を、従来の体験価値中心の店舗論とは異なる「非探索型消費者」の視点から再解釈するものである。買物を「つまらない」と捉え、探索そのものを回避する消費者群の存在を仮説的に整理した。この層は、情報収集や比較検討を前提とせず、迅速かつ最小限の情報で意思決定を完了する特徴を持つ。「まいばすけっと」のような小型店舗は、売場規模や選択肢の制御によって探索負担を低減し、こうした行動様式と適合することが示唆される。一方でコンビニは新規性や変化を通じた探索的価値も提供しており、両者の違いは消費者の志向の違いとして整理できる。本稿は、店舗設計が体験の充実と負担の軽減という異なる方向性を持ち得ることを示す。

キーワード:非探索型消費者、エフォートレス消費、小型店舗、店舗設計、まいばすけっと、購買行動

目次:
1. 序論
2. 視点:買物時間の二面性
3. 考察:非探索型消費者という整理
4. 店舗の役割:意思決定負担の低減
5. 提言:エフォートレス設計という選択肢
6. 結論


Vol.12

欲望の生成と沈黙の構造
― コンプレックスマーケティング試論 ―

2026年4月22日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、外見・身体コンプレックスに訴求するマーケティング(コンプレックスマーケティング)の問題構造を明らかにし、求められる規制の方向性を論じる問題提起的考察である。
需要創造はマーケティングの正当な機能であるが、コンプレックスマーケティングはその延長線上にありながら、存在しなかった欠乏感を消費者に提案し、本物の不安として定着させるという固有の性格を持つ。マーケティング倫理・ジェンダー社会学・公衆衛生の三分野における先行研究を概観した上で、本稿はコンプレックスマーケティングに固有の三つの構造的特徴を指摘する。すなわち、アルゴリズムによる脆弱性のプロファイリング、被害の告発が自己開示を伴うことによる沈黙の強制、そして高額・継続購入を前提とした抜け出しにくい経済設計である。これら三つが重なることで、問題は可視化されにくく、消費者の自律的判断は実質的に損なわれる。対応策としては、消費者リテラシーへの依存や広告内容規制の限界を踏まえ、ターゲティングの仕組みそのものへの介入が求められる。

キーワード:コンプレックスマーケティング、脆弱な消費者、ボディイメージ、ターゲティング規制、アルゴリズム広告、自己客体化

目次:
1. はじめに
2. 需要創造とコンプレックスマーケティング
3. 三分野の先行研究から見えること― マーケティング倫理、ジェンダー社会学、公衆衛生・精神医学 ―
4. 構造的特徴―なぜ問題は見えにくいのか
 4-1. 脆弱性のプロファイリング
 4-2. 沈黙の強制
 4-3. 抜け出しにくい経済設計
5. 規制論の検討
6. おわりに


Vol.13

地球沸騰化時代における消費者行動の変容と小売業の対応
― 猛暑の常態化が来店価値の再定義を迫る ―

2026年4月28日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、猛暑の常態化が消費者の購買行動と小売業のあり方に与える影響を考察したものである。気候変動による「二季化」の進行により、夏商戦の長期化や猛暑対策商品の需要拡大が進む一方、消費者には来店回避や時間帯変更などの行動変容が生じている。こうした変化に対し、小売業には「需要の再設計」という視点から、購買の時期・場所・受け取り方を見直す対応が求められる。またEC事業者にとっては需要獲得の好機である一方、配送能力や品質管理の課題も顕在化する。猛暑時代においては、来店価値そのものの再定義が重要となる。

キーワード:地球沸騰化、猛暑、気候変動、消費者行動、来店価値、EC

目次:
1. はじめに――「地球沸騰化」が変えるもの
2. 猛暑の常態化と「二季化」の進行
3. 消費者の購買行動への影響――来店回避と需要の変化
4. 小売業に求められる対応
5. EC事業者にとっての機会と課題
6. おわりに――「店に行く意味」を問い直す


Vol.14

縮小市場における「企業となり」戦略
― YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」に見るファンとの関係づくり ―

2026年4月28日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

書店市場の縮小が続く中、有隣堂は公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」(以下、「ゆうせか」)を通じて、独自のファン層の形成に成功している。本稿は、その成功をコンテンツ・マーケティングの成功事例として捉えるのではなく、「企業となり」の可視化という観点から考察する。「企業となり」とは、「人となり」から着想した、企業の個性・人格・体温ともいうべきものを指す筆者の造語である。「ゆうせか」は、販促や広報を前面に出さず、人とキャラクターを通じて企業の個性を誠実に可視化することで、信頼と共感に基づくファンとの関係を築いてきた。本稿では、この事例を通じて、成熟・縮小市場において「企業となり」の可視化がなぜ重要かを論じる。

キーワード:企業となり、ファン形成、オーセンティシティ、コンテンツ・マーケティング、縮小市場、差別化戦略

目次:
1. はじめに
2. 書店市場の構造変化と有隣堂の位置づけ
3. 「有隣堂しか知らない世界」の設計思想―「売らない」ことの戦略的意味
4. 「企業となり」の可視化―人とキャラクターを通じた信頼の形成
5. 成熟市場において「企業となり」戦略が持つ意味
6. おわりに


Vol.15

競合店閉店時の新規顧客獲得を考える
― ダイエーいちかわコルトンプラザ店閉店事例から ―

2026年4月29日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、ダイエーいちかわコルトンプラザ店の閉店に伴う約2か月半の店舗不在期間を事例として、競合店が閉店・休業した際の周辺店舗の新規顧客獲得機会を検討する。消費者の店舗選択は習慣的であり、一旦形成されるとスイッチングには一定のコストが伴うが、競合店の退場により、これら習慣が一時的に断裂し、新たな「いつもの店」の選択局面が訪れる。しかし、周辺スーパーマーケットを観察したところ、この好機を活かすための初回来店者向け施策(売場案内、会員登録、説明知識の活用など)はほとんど展開されていなかった。理論的視点(習慣・スイッチングコスト・サービススケープ)と現場観察を結びつけて、チェーン本部と店舗が協働し、「競合店がいない期間」を、単なる一時的な売上増加以上に、新しい顧客を定着させるチャンスとして活用する必要性を指摘する。

キーワード:新規顧客獲得、競合店閉店、顧客定着、習慣的購買、スイッチングコスト、サービススケープ

目次:
1. はじめに
2. 事例の概要
3. 理論的視座――習慣とスイッチング
4. 観察された現状――施策の不在
5. なぜ好機は活かされなかったのか
6. 提言――店舗と本部での対応
7. おわりに


Vol.16

マーケティング技術の政治的転用をめぐる職業倫理の問い
― 技術を持つ者の倫理と責任 ―

2026年5月1日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、商業マーケティングで培われた技術が政治的文脈へ転用されることの倫理的な問題を検討する。両者は手法を共有する一方、影響範囲、不可逆性、検証可能性、規制水準において本質的に異なる。とりわけ、マイクロターゲティングやフィルターバブルにより、個々の有権者に最適化された情報が不可視に流通し、自律的判断が損なわれるリスクが高まる。本稿はこの「見えなさ」を中核問題として位置づけ、マーケティングの「選別」と「増幅」という性質が民主主義と緊張関係に入る可能性を指摘する。その上で、実務家・研究者が仕事の選択や表現設計において自覚的に判断する職業倫理の必要性を提起する。

キーワード:マーケティング技術の政治転用、職業倫理、マイクロターゲティング、フィルターバブル、自律的判断、情報の不可視性

目次:
1. はじめに――マーケティングの政治転用と職業倫理
2. 商業マーケティングと政治マーケティングの類似と差異
3. 人の脆弱性を利用する技術――コンプレックスマーケティングとの類比
4. マーケティング実務家・研究者としての職業倫理
5. おわりに――技術を持つ者の責任


Vol.17

ロングセラー商品の再活性化をめぐる試論
― 設計された意味と生活文脈の衝突 ―

2026年5月11日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、ロングセラー商品が停滞を打破し、再び市場で存在感を高めるメカニズムを、「設計された意味」と「生活文脈」の衝突という視点から考察する試論である。事例分析を通じて、再活性化の契機は企業の設計図の内側ではなく、消費者が生活の文脈において独自に書き換えた意味の中にこそ生まれることを提示する。この「意味の書き換え」には、消費者の先行を企業が追認する経路と、企業が生活文脈の変化を先読みし自ら再定義する経路の二つのパターンが存在する。さらに、SNS時代における消費者の能動的な意味創出が、企業とのあいだに共創的な対話を促し、ブランドの在り方をいかに変容させているかを論じる。

キーワード:設計された意味/生活文脈、意味の書き換え、消費者起点と企業起点、文脈探索、ロングセラー商品の再活性化

目次:
1. はじめに
2. 「設計された意味」の限界と消費者の独自解釈
3. 書き換えの二つの経路――消費者起点と企業起点
4. 文化による「象徴的価値」の書き換え
5. 意思決定の民主化と「10分どん兵衛」の衝撃
6. 実務への示唆――「兆しの発見」としてのマーケティング
7. おわりに

取り上げている事例:サントリー天然水、花王のメリット、ネスレのキットカット、ロッテのガーナ、日清食品のどん兵衛