【連載】Googleフォームの罠 ③ 本当に活かすための「逆算の調査設計」

※本稿は連載記事3本中の3本目です。
[第1回:「誰でも作れるGoogleフォーム」の落とし穴 は こちら]
[第2回:立ちはだかる「データクレンジング」の壁 は こちら]
全3回でお送りしてきたGoogleフォームのアンケートに関するコラムも、今回がひとまず最終回です。
第2回では、ダウンロードしたCSVデータを分析できるように整える「データクレンジング」の泥臭いステップをご紹介しました。カンマ区切りのセルを分解し、テキストを数字に置き換える作業に追われ、「手軽なはずのGoogleフォームで、なぜこんなに苦労しているんだ……」と頭を抱えたことのある担当者の方も多いはずです。
ここで最も重要な(不都合な真実と呼びうるような)ことを、お伝えします。
「データクレンジングや集計の段階で致命的な苦労をしている時点で、実はそのアンケート調査の失敗は、スタートする前にすでに決まっている」
アンケート調査の業務フロー
本格的に企業が市場調査を行う場合、以下のようなステップを一段ずつ、縦方向に厳密に進めていきます。本来のリサーチ業務の流れを書き出してみましょう。
調査目的の明確化・仮説立て
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調査対象者(ターゲット)とサンプルサイズ(有効回答者数)の決定
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質問項目・選択肢の作成(調査設計)
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画面作成(Googleフォーム等への入力)・テスト画面の検証
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アンケートの配信・実査開始
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回収データのモニタング(進捗確認)
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実査終了・ローデータのダウンロード
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データクレンジング(無効回答の除外、データの補正、コード化など)
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単純集計(自動グラフの確認)
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クロス集計(属性別の分析)
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多変量解析・因子分析などの高度な統計分析
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分析結果の解釈・インサイト(洞察)の抽出
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報告書(レポート)の作成
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クライアントへの報告・意思決定への活用
このフローを見て気づくのは、データクレンジングやクロス集計という作業は、全体の工程の「後半戦」に位置しているということです。
リサーチの鉄則は出口からの「逆算」
リサーチのプロが上記のフローに沿ってアンケート調査を行う、最も時間をかけ、丁寧におこなうのは、上流工程である「調査設計(ターゲット・サンプル数・質問の決定)」です。そして、その設計は必ず、後半の「どんなクロス集計を行いたいか(出口)」から逆算して作られます。
プロの頭の中、あるいは設計書には、フォームを作る前にすでに、以下のような「空っぽのクロス集計表(アウトプットの型)」が描かれているのです。
【図表】調査設計時に想定しておくクロス集計のイメージ

「今回は『20代女性のSNS認知率が、他の属性に比べて特に高いはずだ』という仮説を検証したい。だから、表側(行)で綺麗にクロス分析できるように、事前に『性別』と『年代』の質問を単一選択(SA)で確実に取得しておこう。行ごとの比率(横%)を算出して横並びで比較したときに、20代女性のセルの数値が突出していれば仮説立証だ。そのためには、各属性の人数が少なすぎるとパーセンテージがブレてしまうから、少なくとも各属性30人(全体で300人)以上の回答を集めたい。」
ここまで見据えて初めて、意味のある「調査設計」が完成します。
(出たとこ勝負の設計がもたらす)後工程の悲劇
Googleフォームの「誰でも簡単にすぐ画面が作れる」というメリットが裏目に出ると、この上流工程がスルーされてしまいます。どんなクロス集計をしたいか(出口)を考えないまま、「とりあえず思いついた、聞いてみたい質問」だけを並べて、出たとこ勝負で配信してしまうのです。
その結果、回収した後に以下のような悲劇が起こります。
- 集計の軸にしようと思った質問を入れ忘れていた。
- 集計の軸にしようと思った質問を自由記述にしたために、AC(アフターコーディング)に膨大な時間を費やす羽目になった。
- 全体で30件しか回答がないのに、細かく属性を掛け合わせようとした結果、該当者が「0人」や「1人」だらけの「疎なクロス表」になり、分析が成立しない。
- 表側に配置する質問をMA(複数選択)にしたため、クロス集計の解釈が難しすぎる。
これらは、回収後のExcelのスキルの問題ではありません。上流の「調査設計」の段階で、すでに詰んでしまっていた(失敗が確定していた)ことの現れなのです。
まとめ:ツールのクセを知り、リサーチを力に変えよう
Googleフォームは「質問の入力」や「画面の配布」を劇的に簡単にしてくれましたが、リサーチで最も重要な「調査の設計」を自動化してくれたわけではありません。
「誰に、何件、何を、どういう出口を見据えて聞くか」という人間の思考プロセス(調査設計)が、アンケート調査が価値を生むか、今後の施策をより良くするための力となるかを決めます。
手軽に使えるツールだからこそ、いきなり作成画面を開く前に一歩立ち止まり、出口から「逆算」する――このプロ視点を持つことで、Googleフォームを、ビジネスを動かす強力なマーケティング・ツールとして活用できるはずです。
※本稿は連載記事3本中の3本目です。
[第1回:「誰でも作れるGoogleフォーム」の落とし穴 は こちら]
[第2回:立ちはだかる「データクレンジング」の壁 は こちら]
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