【連載】Googleフォームの罠 ① 「誰でも作れるGoogleフォーム」の落とし穴

※本稿は連載記事3本中の1本目です。
[第2回:立ちはだかる「データクレンジング」の壁 は こちら]
[第3回:本当に活かすための「逆算の調査設計」 は こちら]

誰もが簡単にアンケートを行える時代の光と影

現在、ビジネスの現場において、アンケート調査のハードルは、以前では考えられないほど下がっています。Googleフォームをはじめとする優れたクラウドツールの登場により、専門的なプログラミング知識や高額なシステム投資をしなくても、また、リサーチ会社に外注せずとも、短時間でスマートなアンケート画面が作れるようになりました。

誰もが思い立ったその日に、無料でリサーチを行える環境が整ったことは、意思決定のスピードを上げるという意味で、間違いなく素晴らしい進歩であり、光です。

しかし、市川マーケティング研究所には、こんなご相談が届いています。

「Googleフォームで手軽にデータを集めてみたものの、いざ分析しようとしたら、実務に使えなくて途方に暮れている…」

便利なツールが登場し、リサーチの民主化が進んだことは光であると同時に、このような影も同時に生み出しているようです。

なぜ、こうした悲劇が生まれるのかというと、Googleフォームというツールの本来の生い立ち、あるいは、思想と、このツールを利用する企業や人の目的との間に、ミスマッチがあるからだと考えます。

Googleフォームのルーツは「市場調査ツール」ではない

Googleフォームは、企業が本格的な「市場調査(マーケティングリサーチ)」を行うために開発されたものではありません。

2008年頃のGoogleフォームは、独立したアプリではなく、表計算ソフトのGoogleスプレッドシートの1機能でした。開発思想は、「1つのスプレッドシートに、複数人で同時に、間違いなくテキストを入力してもらうための親切な入力画面」というものです。

サークルの飲み会の出欠確認や、身内の簡単な意見募集といったカジュアルなコミュニケーションにおいて、この設計は抜群の威力を発揮します。
回答タブを開いた瞬間に、綺麗な円グラフや棒グラフがリアルタイムで自動生成されるのも、統計の知識がない一般ユーザーでも、パッと見てすぐに結果が分かるようにするための、Googleなりの手厚い親切心だと言えます。

ちなみに、このように、全体で何人がYESと答えたか、どの選択肢が一番多かったかを単一の設問ごとに見る集計を、リサーチ用語で「単純集計(GT:Grand Total)」といいます。

ビジネスで本当に必要なのは「単純集計」ではなく「クロス集計」

しかし、通常、企業のマーケティング実務や意思決定においては、この「自動で生成された単純集計のグラフ」を眺めるだけでは、次の具体的なアクション(施策)には繋がりません。私たちが本当に知りたいのは、以下のような、「回答者の属性や行動によって、特徴が違うのかどうか」です。

「このサービスに『満足』と答えた人は、男性なのか女性なのか?」
「新商品を『買いたい』と答えた人は、20代なのか、50代なのか?」
「認知経路で『SNS』と答えたのは、新規客なのか、リピーターなのか?」

このように、2つ以上の質問(例:性別×満足度)を掛け合わせて、属性別の傾向の違いをあぶり出す分析手法を「クロス集計」と呼びます。

Googleフォームは「単純集計」は自動化してくれますが、実務で最も重要となる「クロス集計」は、Googleフォームで得た回答データを使って、分析者自身が(あるいは、市川マーケティング研究所のような専門機関が)行う必要があります。

そして、クロス集計をするために、回答データ(生のデータという意味で、「ローデータ」と呼びます)を、CSVなどの形式でダウンロードしたは良いものの、非常に強いクセを持ったデータの山を前に、文字通りフリーズしてしまう――そんな光景が目に浮かびます。

次回は、Googleフォームでアンケート調査を実施した後に待ち受ける、データ処理の泥臭い現実について、具体的にどのような作業が発生するのかをやさしく解説します。


※本稿は連載記事3本中の1本目です。
[第2回:立ちはだかる「データクレンジング」の壁 は こちら]
[第3回:本当に活かすための「逆算の調査設計」 は こちら]


お問い合わせやご相談は、こちらからお願いいたします。