【コラム】まちづくりの経験が調査に役立った話――「やさしい日本語」で作成するアンケート

1.はじめに

本稿の公開予定日は2026年7月ですが、執筆している今日は同年6月30日、上半期の最終日です。

今朝、上半期が終わるにあたって、半年間で取り組んだ様々な事業を振り返っていました。すると、一見、よくあるリサーチ支援の業務に見えるものの、実は今の時代ならではの要素が色濃く出ている案件がありました。

本稿では、上半期に取り組んだ一つの案件を紹介します。


2.「やさしい日本語」で書かれた調査票の監修

ご相談内容は、ご依頼者自身が作成したアンケート調査票を実査開始前にプロの目で点検してほしいというものだったのですが、回答者が対象自治体の外国人住民という点がユニークで、設問文や選択肢は「やさしい日本語」で書かれていました。

ご依頼者は、ある自治体で多文化共生に関する事業を行っており、自治体に住む外国人の困りごとを把握したいと考えていたのです。
ちなみに、「やさしい日本語」は、〈難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語のこと〉(引用)です。

出所:出入国在留管理庁・文化庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(2020年8月)、https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/pdf/92484001_01.pdf、2026年6月30日閲覧

このガイドラインに掲載されている、一般的な日本語を「やさしい日本語」に書き換える際の例を紹介します。

例1
在留カード以外は必要ありません。
 ↓
在留カードを持ってきてください。

例2
住民税は、市町村で課税されます。
 ↓
住民税は、市町村へお金を払います。

例3
お手続きは、休日はなるべく避けてください。
 ↓
平日に手続きをしてください。

例4
こちらに記入願います。
 ↓
この紙に書いてください。


3.たまたま持っていた知識が役立つこと

アンケートの調査票の作成や監修には、長年に渡って携わってきました。一方で、これまでに業務で「やさしい日本語」を扱った経験はありませんでした。

ただ、市川市でまちづくりを行うNPOの活動(特定非営利活動法人フリースタイル市川)の一環で、同法人のウェブサイトにコラムを執筆しているのですが、外国人住民が増えており、今では人口の4%を外国人が占める、そして出身国・地域が約110という市川市が、多文化共生の地域づくりを推進していること、その中で「やさしい日本語」の活用も進めていることから、私自身、「やさしい日本語」について調べ、コラムで何度か取り上げたことがありました。

こうした経験を活かして、当該のご依頼を引き受けたのでした。


4.「やさしい日本語」で調査票を作る/監修する

外国人の回答者向けに「やさしい日本語」で書かれた調査票を作成する(調査設計を行う)ということは、まず、通常の調査で使用される一般的な日本語で作成した上で、全ての日本語を「やさしい日本語」に置き換えていく、という手順を踏みます。

その意味では、日本語版の調査票を作成した後に、外国語版に翻訳する作業に近いと言えます。

一般的な日本語で調査票を作成する段階で、設問の順や選択肢の設け方を適切に整えておく必要があります。その後、言葉を「やさしい日本語」に変換します。

上半期に担当した案件では、ご依頼者が「やさしい日本語」で調査票を一旦作成した段階で、私がこれを点検し、修正を施しました。
設問文や選択肢の文言の修正はもちろんですが、選択肢の追加や集約、削除、文言のゆれのチェックなども行いました。

リサーチ案件で「やさしい日本語」を扱ったのは初めての経験でしたが、一般的な日本語での質問票の場合と同じく、回答者の立場で「答えられるか」「答えやすいか」という視点で丁寧に点検し、修正を重ねていくことで、ご依頼者からも好評をいただきました。


5.地域活動がもたらす仕事の広がり

プロとして長年携わってきた専門分野(調査)の知識と経験に、地域活動を通じて得た知識(多文化共生、やさしい日本語)が組み合わさったことで、新しい仕事の形が生まれました。それが、今回紹介した事例です。

私はマーケティングの仕事のほかに、市川市でまちづくりや音楽活動など、様々な地域活動に参画しています。これらの活動は、もともと仕事に役立てようと始めたものではなく、それ自体が楽しく、かけがえのない時間だからこそ続けてきたものです。地域で新たにできた仲間とともに活動し、仕事ではなしえない形で地域に関わる、そんな経験が、今回のように思いがけず仕事へとつながることもあれば、つながらないこともあるでしょう。

ただ、直接つながるかどうかにかかわらず、地域での経験は決して無駄にはならない、ということを、今回改めて実感しました。専門分野を一つに絞り込み、磨き続けることも大切ですが、仕事の外側で得たものが、ふとした瞬間に専門性と結びつき、思いがけない仕事の広がりを生むこともあると思います。

私自身、色々な活動をしていて、手を広げすぎている感覚がないこともないのですが、地に足をつけて仕事をしつつ、地域に足をつけた活動も続けることで、面白い経験をすることができているのは、ゆるぎない事実です。

地域活動に興味がある、でも参加しようかどうか迷っているという人がいたら、悪くない選択肢ですよ、と控えめにすすめたいと思います。

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市川マーケティング研究所の鈴木です。 2024年9月に市川マーケティング研究所の活動を始めた私は、それ以前から、市川市において、まちづくりを行うNPO法人の理事を務めた…