【コラム】人口減・世帯数増時代のマーケティング

千葉県の2025年の国勢調査人口が2020年から減少したことが千葉日報で報じられていました。
【速報】千葉県の人口、初めて減少に転じる 国勢調査で
https://www.chibanippo.co.jp/articles/1617282
千葉県が公表したデータ※1および総務省統計局公表の速報結果※2によると、市川市の2025年の国勢調査人口は、2020年と比べ2,469人減少しています。一方、世帯数は6,889の増加。つまり、市川市は世帯数が増え、人口が減っています※3。
世帯当たり人員は、2020年の2.04から、2025年は1.98となり、2.00を下回りました。
人口が減っているか増えているかということと同じくらい、世帯当たり人員の減少(単独世帯数の増加、または、その構成比の上昇)にも注目すべき――私(市川マーケティング研究所の鈴木雄高)は、かなり前から、そう主張してきました。
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千葉県全体でも、人口は減り、世帯数は増えています。
千葉県の59自治体について2025年の国勢調査をみると、2020年調査時から、
・人口増 15自治体(25%)
・人口減 44自治体(75%)
でした。また、
・世帯数増 36自治体(61%)
・世帯数減 23自治体(39%)
となっています。
日本全体でも、人口は減り、世帯数は増えています。
47都道府県について2025年の国勢調査をみると、2020年調査時から、
・人口増 2都県(いずれも世帯数も増加)
・人口減 45道府県(世帯数増は30道府県 世帯数減は15県)
2025年の国勢調査人口が10万人以上だった396自治体のうち、2020年と比べて
・人口増 120自治体(30%)で、全て世帯数増
・人口減 276自治体(70%)で、世帯数増が210、世帯数減が66
でした。
2020年から2025年にかけて、「人口が減り、世帯数が増加している」地域が多いことが分かります。
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ここで、国立社会保障・人口問題研究所による、日本の世帯数の将来推計を確認します。以下のグラフは、同研究所が、6年前の国勢調査(2020年10月実施)を基に、2020~50年の30年間について将来推計を行った結果です(aのみ縦軸の最大値が6千万世帯、他は3千万世帯である点に注意してください)。注目のグラフは「b) 単独世帯」です。
家族類型別一般世帯数の推移(昭和55(1980)年~令和32(2050)年)



グラフの出所:国立社会保障・人口問題研究所(2024)「日本の世帯数の将来推計(全国推計)(令和 6(2024)年推計)-令和 2(2020)~32(2050)年- [概要]」(2024年4月12日公開、2026年6月15日閲覧)https://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/HPRJ2024/hprj2024_gaiyo_20240412.pdf
マーケティングの実務やコンサルティングをしていて、難しいのは将来の予測です。予測が「当たる」(予測値と実測値が等しくなるか、それに近くなる)ケースは稀です(とはいえ、予測のロジックを構築すること、それを関係者が認識すること、予測を踏まえて計画を立て、実際が予測から外れる場合には調整することなどは実務上重要です)。
そんな中でも、人口の予測はかなり正確で、世帯数の予測も、人口程ではないでしょうが、相当程度正確なものだと言え、マーケティング戦略や戦術を検討する上で、参照すべき重要な資料です。
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人口が減っているか増えているかということと同じくらい、世帯当たり人員の減少(単独世帯数の増加、または、その構成比の上昇)にも注目すべき――私(市川マーケティング研究所の鈴木雄高)は、かなり前から、そう主張してきました(再掲)。
世帯人数が減ることは、単なる数字の変化ではなく、「セーフティネットの希薄化」を意味します。
かつては家族内で完結していた介護や見守りが(それが良かったかどうかという判断はともかく、最早そうしたものが)機能しなくなり、それがそのまま行政サービスへの負荷増大につながります。相互扶助の弱体化や喪失が顕著になる可能性があります。
また、単独生活者は、誰かと同じ空間にいる時間が減ることで、小さな体調の変化や心理的な苦境を他者が察知する機会が少ないという問題があります。
「家族」という最小単位の共同体が解体されることは、その延長線上にある「地域共同体」への帰属意識を薄れさせる要因になり得ます。世帯と地域の接点が減るためですね。
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一方、マーケティングの現場において、世帯当たり人員の減少は、「個人の購買」が(複数人世帯の購買と同等か、それ以上に)重要になっていることを意味します。
少なくないマーケティング施策が、今でも「家族での消費」を前提としていますが、単独世帯は、必要な量や頻度、そして求める価値が、家族とは全く異なります。つまり、個人の生活導線に寄り添った、より細やかなパーソナライゼーション(個人対応)が求められます。
間違いなく、「大きくまとめて売る時代」から、「小さく・近く・継続的に届ける時代」になっています※4。以下のようなニーズの変化、市場の対応が顕在化していくと考えられます。
▼小容量・小単位化
食品、日用品、家電など、あらゆるカテゴリーで「ひとり分」の需要が高まります。大容量パックより小分け、大型家電より小型・コンパクトなものへ。
▼サービスの代替需要
料理、掃除、洗濯、家の修繕など、かつて家族内で分担していたことを、外部のサービスが担うようになります。外食・中食、家事代行、修繕・メンテナンスサービスの需要が拡大します。
▼デジタル・非対面チャネルの重要性向上
ひとり暮らしは時間の使い方が自由な反面、平日昼間に店舗へ行けないケースも多い。EC、サブスクリプション、自動配送の重要性が増します。
▼小商圏・近隣立地・小型店舗
遠くの大型店より、家の近くで用が足りることへのニーズが高まります。小型店舗、ドラッグストア、コンビニ、そして、「まいばすけっと」のような小型スーパーの役割がさらに拡大します。
▼見守り・つながりサービス
孤独・孤立への対応として、安否確認、コミュニティ型サービス、サポート付き住宅など、「生活を支える」サービスが拡大します。
心理的なサポート、たとえば、他者と関わる機会が少ないことで感じる寂しさを埋めるようなサービス、そして、いかに「孤立を防ぎつつ、個としての尊厳を保つか」を支援するサービスに対するニーズが大きくなると思います。
また、そのような、人の寂しさに付けこむ者も増えると考えられます。
単独世帯の増加は、市場の変化であると同時に(というか、それ以前に)、社会の変化でもあります。マーケティングに携わる者として、その両面を見据えておきたいと思います。
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〈備考〉
※1:千葉県 総合企画部統計課「令和7年国勢調査結果『速報』について(要計表による千葉県の人口と世帯)」(2026年5月20日公開、2026年5月20日閲覧)
https://www.pref.chiba.lg.jp/toukei/press/2026/0520sokuhou.html
※2:総務省統計局「令和7年国勢調査(速報集計、人口速報集計)」(2026年5月29日更新、2026年6月10日閲覧)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200521&tstat=000001230925&cycle=0&year=20250&month=24101210&tclass1=000001232201&tclass2=000001232202
※3:市川市の人口が減少したという記述を見て、「市川市では人口が増えて、ついに初めて50万人を超えたのではないのか」と疑問を持った人もいると思います。それは正しい認識です。人口と言っても、住民基本台帳人口(住民票登録に基づくもの)と、国勢調査人口(5年に1度、10月の調査時点のもの)があります。自治体が通常用いる自治体人口は住民基本台帳人口で、市川市のそれは増加を続けています。本稿で取り上げたのは国勢調査人口です。住民票の登録地は関係ありません。
※4:もっとも、このような時代においても、「大容量」の商品を「まとめ買い」する場所として人気を博しているロピアのような小売業者も存在していることからわかる通り、「家族」を主たる顧客として位置付けた事業にもチャンスがないわけではありません。

