【レポートVol.18】AI仲介型ショッピングがもたらす顧客接点のシフト ― Google「Universal Cart」とAmazon「Alexa for Shopping」が示唆する構造変化 ― 2026年5月時点の観察と考察

鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)
初版公開(PDF):2026年6月11日
Web版公開:2026年6月29日

要旨
2026年5月にGoogleが発表したUniversal Cartと、Amazonが発表したAlexa for Shoppingは、単なるショッピング支援機能にとどまらず、買い物における顧客接点のあり方を変える可能性を持つ。本稿では、両サービスの機能と今後の発展可能性を整理したうえで、EC事業者、小売業、メーカー、消費者への影響を考察した。今後、消費者の商品探索や比較、購入の一部がAIアシスタントを介して行われる比率が高まれば、企業と顧客との接点は自社サイトや店舗からAIプラットフォーム側へ移行する可能性がある。その結果、価格競争の激化やブランド表現機会の変化が生じる一方、AIに理解・推薦されやすい商品情報設計の重要性が高まると考えられる。本稿は、GoogleとAmazonの発表内容を踏まえ、こうした構造変化の可能性と事業者に求められる対応について考察した。

キーワード:顧客接点、AI仲介型ショッピング、AI購買プラットフォーム、Universal Cart、Alexa for Shopping、AIO(AI Optimization)

1.はじめに――Google「Universal Cart」とAmazon「Alexa for Shopping」の登場

2026年5月、GoogleとAmazonが相次いで新しいショッピングサービスを発表した。「Universal Cart」(Google)と「Alexa for Shopping」(Amazon)である。これらは一見するとそれぞれの企業による新しい便利機能に見えるかもしれない。しかし、両社の発表内容を踏まえると、オンライン・オフラインを問わず、買い物における顧客接点と購買プロセスの主導権がどこに所在するのかを左右する重要な転換点となる可能性が高い。

本稿では、二つのサービスの発表時点での情報を整理したうえで、EC事業者、リアル店舗を持つ小売業者、メーカー、そして消費者への影響について考察する。

2.Google「Universal Cart」とは何か

2-1.公式発表から確認できる機能

Google の Universal Cartの特徴は、「複数のウェブサイト・複数のサービスにまたがる買い物の情報をGoogle側で管理できる」という点である1

例えば、YouTubeで家具のレビュー動画を視聴し、そこで紹介されているテーブルに興味を持ったとする。従来は、その商品を購入するために、メーカーのサイトやAmazon、あるいは家具店のサイトに移動し、移動先のサイトで商品を「カート」に入れ、購入プロセスを進める必要があった。

Universal Cartであれば、YouTube上で見つけたテーブルを「Googleが管理する買い物リスト」に追加することで、その商品の情報がGoogle側に集約される。さらに、別のサイトで見つけた椅子や照明も、同じリストに追加できる。
公式発表で確認できるUniversal Cartの機能は、以下の通りである2

・価格履歴追跡(Price History):かつてのカートに入れた商品の価格変動を記録
・セール情報追跡(Deal Tracking):セール情報を自動検知
・値下がり検知(Price Drops):設定した目標価格まで下がると通知
・在庫復活通知(Stock Alerts):売り切れだった商品が再入荷されたら通知
・互換性チェック(Compatibility Checks):商品同士の相性を確認

Google Payとの連携により、複数のサイトで見つけた商品を検索・比較した上で購入することが可能となる3

2-2.将来の拡張可能性

現状、Universal Cartは、全店舗を横断した「自動比較表生成」を公式に発表しているわけではない。しかし、Googleが「Search・Gemini・YouTube・Gmail横断のショッピングハブ」と説明している点4を踏まえると、将来的には、複数の販売チャネル間での価格比較機能が強化される可能性は十分考えられる。

また、支払方法やロイヤルティプログラムの特典を認識するという公式発表5の先には、今後、これらの情報を自動で組み合わせ、消費者にとって最も経済的な購入パターンを提案するような機能拡張が起こり得るとも考えられる。

3.Amazon「Alexa for Shopping」とは何か

3-1.公式発表から確認できる機能

一方、AmazonのAlexa for Shoppingは、音声指示によって、AI がショッピングを支援するサービスである6

たとえば、朝の忙しい時間に、キッチンにいながらスマートスピーカーに話しかける。「アレクサ、いつものシリアルを注文して」。Alexaは、購買履歴から「いつもの」シリアルを認識し、注文処理までおこなってくれる。

公式発表で確認できるAlexa for Shoppingの機能は、以下の通りである7

・自然言語対応:曖昧な指示でも理解して検索
・価格履歴表示:過去の価格変動をグラフで表示
・商品比較支援:複数候補の情報を整理して提示
・定期補充:毎月同じ商品を自動注文
・条件付き購入:「値段が○○円以下になったら買う」という事前設定が可能

さらに、「Buy for Me」機能により、Amazon内の商品だけでなく、ブランド公式サイトなど一部の外部サイトでの購入も代行できるようになっている8

3-2.将来の拡張可能性

現状、Amazonが公式に発表している検索対象は、Amazon内商品とブランド公式サイト、Buy for Me対応サイトである9。大手ECモールまで横断検索するとは述べられていない。

ただし、Alexaが「複数プラットフォーム横断のAIアシスタント」として位置付けられている点を考えると、将来的には、Amazon外のプラットフォームとの連携が拡大される可能性は十分あるだろう。

4.「顧客接点の移転」が意味すること

これまでのオンラインショッピングは、消費者自身がサイトやアプリを開き、商品を探し、比較し、注文するというプロセスを伴っていた。つまり、顧客接点は各企業のウェブサイトやアプリにあった。

Googleは、Universal Cartを「shopping hub」と呼び、Search・Gemini・YouTube・Gmail横断で機能すると説明している10。また、テクノロジー専門のニュースサイトTechCrunchは、Googleが消費者と小売業者の関係の中でより中心的な役割を担おうとしていると論評している11

これが意味するのは、消費者の買い物体験が、各社のウェブサイトやアプリの中ではなく、Google・Amazonという大型プラットフォームのAIアシスタントを経由して行われる比率が高まる可能性があるということである。

5.事業者と消費者に起こりうること

ここでは、この構造変化がもたらす影響について考察する。

5-1.EC事業者の場合

EC事業者には、購買プロセスの効率化による機会が生じるだろう。Google Universal Cartによって購買プロセスの摩擦が低減されることが期待される点12を考慮すると、高い購買意欲を持つユーザーを取り込む「間口」が広がる可能性がある。

このような好材料が想定される一方、以下のようなことが危惧される。

GoogleやAmazonのAIアシスタントを通じて商品発見から決済までが行われるようになると、消費者はEC事業者のサイトを訪問する必要がなくなる。これまで、自社サイトのUI/UX、ブランディング、接客ストーリーで差別化し、サイト訪問者を集めていたEC事業者にとって、その努力が活かされる場が失われるリスクがある。

同時に、価格履歴とセール情報追跡機能の普及により、値引き圧力が高まると考えられる。AIによる価格追跡や比較支援が一般化した状況では、消費者が常に「最安値を待つ」心理になるためである。その結果、粗利の確保が従来以上に難しくなる可能性がある。

5-2.リアル店舗を持つ小売業者の場合

オムニチャネル対応ができる企業には事業機会がある。Googleは、小売業者が自社の在庫情報、店舗でのピックアップサービス、会員ポイント、店舗限定オファーなどをGoogle側に連携させる仕組みを用意している13。これを活用できれば、来店前の検討段階をGoogle側に手伝わせながら、最後の購入をリアル店舗に誘導することも可能である。

一方で、課題もある。Alexa for Shoppingの定期補充機能や価格追跡機能は、日用品や定番品の購買を来店前に完結させる。特に、価格優位だけで戦ってきた店舗にとっては深刻である。AIが「最安値はここです」と即座に教えてくれる状況においては、「安いから来店する」という顧客心理が消失するためである。

5-3.メーカーの場合

商品情報が充実しており、「なぜこの商品が良いのか」を言語化できているメーカーは優位に立てるだろう。Googleは「Universal Commerce Protocol」として、「商品Q&A」「互換性情報」「代替品」「関連アクセサリ」といった構造化データの充実を求めている14。こうした情報が整備されている商品ほど、AIは正確に比較・推薦できる。

また、Alexaの「Buy for Me」機能により、Amazonに出品していなくても、メーカー直販サイトから購入可能になるため、流通網に依存しすぎず、ブランド直販の露出を増やせる可能性が生まれる。

一方、ブランド体験の表現機会の縮小が課題となりうる。従来は、パッケージデザイン、棚割、広告、ランディングページなど、様々な場所でブランドの世界観を表現できた。しかしAIが仲介する場合、まずAIによる情報の要約や比較、ランキングに落とし込まれる。その結果、ブランドのストーリーよりも、スペック、レビュー、価格といったシンプルな情報が前景化しやすくなる。知名度の低いメーカーや、差別化を言語化できていないメーカーは、AIにピックアップしてもらいづらく、購買されづらくなっていく可能性がある。

5-4.消費者にとっての変化

消費者にとっては、全体としては極めて便利になる可能性が高いだろう。Google Universal Cartは、複数のサイトの商品を一つのカートに入れて、自動で価格追跡・値下がり通知ができる。また、Alexa for Shoppingは音声だけで複雑な検索・購入を代行してくれる。特に定番品や情報過多なカテゴリーの買い物において、時短効果は大きいと考えられる。

しかし、懸念事項もある。「なぜその商品が推薦されたのか」の根拠が見えにくくなることは、その一つである。AIが価格やレビューを過度に重視すると、長期的には似た商品に収斂する可能性もある。また、音声購買については、セキュリティやプライバシーへの不安も依然として存在している。

6.事業者が今、備えるべきこと

これまでの分析を踏まえると、事業者には、以下のような対応が求められる。

最も重要なのは、AIに正しく理解・推薦・比較される商品情報設計へと経営資源をシフトさせることである。これまでは、SEO対策や広告運用が重要だったが、今後は:

・構造化商品データの充実
・Q&Aコンテンツの拡充
・互換性・代替品情報の整備
・レビュー品質の管理

といった、「AIO(AI Optimization)」という新しい最適化が重要になる。

EC事業者は、Google Merchant Centerなどを活用して、自社商品情報をAIフレンドリーな形で整備することが急務である。リアル小売業者は、Google側への店舗情報・在庫情報の連携を進めつつ、オムニチャネル施策の本格推進が必須となる。メーカーは、単なるスペック情報ではなく、「この商品は何に使うのか」「どんなシーンに最適か」「代替品との違いは何か」といった、AIが参考にする情報を戦略的に提供する必要がある。

同時に、価格競争力だけで戦おうとする事業者は確実に苦しくなるだろう。AIによる価格追跡や比較支援が一般化した状況では、粗利を守る手段が失われるからである。むしろ、価格以外の「なぜこの商品・このブランドが選ばれるべきなのか」という購買理由を、AIにも理解できる形で示すことが重要であり、それが、生き残りの鍵になるだろう。

7.おわりに

2026年5月のGoogleによるUniversal Cartと、AmazonによるAlexa for Shoppingの発表は、新しい便利なサービスの出現ということに留まらない。それは、買い物における顧客接点と購買プロセスの主導権が、各企業のサイトやアプリから、GoogleやAmazonという大型プラットフォームのAIアシスタントへとシフトしていく可能性を示唆している。

つまり、「顧客接点と購買プロセスの主導権がプラットフォーム側に集中する」という構造変化が起きうると言える。

消費者にとっては大きなメリットがある一方で、事業者は主導権を失いやすい厳しい環境となる。ただし、この変化に早期に対応し、AIに最適化された商品情報設計と価格以外の差別化を実現できた企業は、逆に先行者として大きなメリットを獲得できるだろう。

これまでの流通の歴史を振り返ると、競争優位は「顧客接点を握る主体」に移ってきている。

メーカー → 小売業 → ECモール → AI購買プラットフォーム(仮称)

もちろん、この変化がそのまま実現するとは限らない。商品カテゴリー、規制、競争環境、消費者の受容度などによって、その進行速度や到達点は異なるはずだ。

Google Universal CartとAlexa for Shoppingの登場により、この次の矢印が現実になるかもしれない。こうした状況において、企業が競うのは、商品の優劣だけではない。AIに選ばれ、顧客との接点を維持できるかどうか、その力が問われるようになるだろう。

〈注〉

1.Google(2026a)による。

2.Google(2026a)による。

3.Google(2026a)による。

4.Google(2026a)による。

5.Google(2026a)による。

6.Amazon(2026a)による。

7.Amazon(2026a)およびAmazon(2026b)による。

8.Amazon(2026b)による。

9.Amazon(2026b)による。

10.Google(2026a)による。

11.TechCrunch(2026)による。

12.Google(2026a)による。

13.Google(2026b)による。

14.Google(2026b)による。

〈参考文献〉

Amazon(2026a)「Meet Alexa for Shopping, your personalized, agentic AI assistant on Amazon」About Amazon, 2026年5月13日, https://www.aboutamazon.com/news/retail/alexa-for-shopping-ai-assistant(2026年6月11日閲覧)

Amazon(2026b)「How to use Alexa for Shopping to compare products, check price history, auto-buy items at target prices, and more」About Amazon, 2026年5月18日, https://www.aboutamazon.com/news/retail/how-to-use-amazon-shopping-ai-assistant(2026年6月11日閲覧)

Google(2026a)「Introducing the Universal Cart and more ways to help you shop」Google Official Blog, 2026年5月19日, https://blog.google/products-and-platforms/products/shopping/google-shopping-cart/(2026年6月11日閲覧)

Google(2026b)「How we're helping retailers thrive with new Universal Commerce Protocol features and AI tools on Google」Google Official Blog, 2026年5月20日, https://blog.google/products-and-platforms/products/shopping/shopping-updates-google-marketing-live/(2026年6月11日閲覧)

TechCrunch(2026)「Google's new Universal Cart wants to follow your entire shopping journey across the internet」2026年5月19日, https://techcrunch.com/2026/05/19/googles-new-universal-cart-wants-to-follow-you-across-the-entire-internet/(2026年6月11日閲覧)

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