【コラム】高収益スーパーマーケット「ベルクス」 ― 職人の技術とテクノロジーの融合 ―

首都圏のスーパーマーケット(SM)業界は、「高品質・Everyday Low Price」という経営方針を掲げるオーケーや、「食生活提案型」の店舗で知られるヤオコー、「食のテーマパーク」のようなロピアなど、強豪がひしめく激戦区です。その中で、非上場ながらも異彩を放ち、業界トップクラスの収益性を誇っているのが、今回取り上げるスーパーベルクス(以下、ベルクス。運営企業は株式会社サンベルクス)です。

一見、標準的な地域密着型のスーパーマーケットに思えるベルクスですが、公表されている経営数値や、同社の取り組みを見ていくと、極めて戦略的かつ合理的な経営の実態が浮かび上がってきます。

今回は、知名度こそ先に名を挙げたスーパーマーケットには劣るものの、目の離せない存在であるベルクスの戦略を4つの視点から掘り下げます。


【特徴1】職人の技を活かした専門店の集合体

ベルクスの最大の特徴は、自らを単なる総合食品スーパーではなく「専門性追求型スーパーマーケット」と定義している点にあります【注1】

青果店として創業した同社は、売場を「八百屋・肉屋・魚屋・惣菜屋」というプロの集団が寄り添った形に設計しています。象徴的なのは、2022年から導入された新フォーマットです。店舗のメイン動線である「第一主通路」に、核となる青果・惣菜・鮮魚を集中配置しました【注2】。これにより、顧客は入店してすぐにベルクスの最大の強みである鮮度と旬を体感することになります。

専門店化とも呼びうるような、この新フォーマットですが、1979年に設立された自前の青果仲卸会社「花徳」による調達網や【注2】【注3】、チリ産銀鮭、カナダビーフといった価値ある商材を、驚くような価格で提供する仕入れの目利きが、これを成り立たせているのです【注4】


【特徴2】業界平均を30%上回る人時生産性とDX

ベルクスの強さを最も端的に表しているのが、「人時生産性(従業員1人が1時間あたりに稼ぐ粗利益高)」です。

2024年2月時点のデータによると、ベルクスの人時生産性は5,200円です。これは上場スーパー34社の平均値である4,000円を大きく上回ります【注2】。単純計算で業界平均より30%も効率的に利益を生み出していることになります。

この驚異的な生産性の高さを支えるのは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。

・作業の可視化: スマート端末を導入し、どの作業にどれだけの時間がかかっているかを徹底的にデータ化【注5】
・属人化の解消: マニュアル作成ツール(Teachme Biz等)を活用し、従来は「職人の背中を見て覚える」ものだった精肉や惣菜の加工工程を標準化【注6】
・自動化の推進: 自動発注システムやRPA、ノーコード開発を駆使し、補充や事務作業といった「利益を直接生まない工数」を極限まで削減【注5】

顧客の目に映っている売場は「活気ある専門店」でありながら、バックヤードは、さながら「高度にシステム化された工場」のようです。ベルクスの強さは、この二面性にあると言えるでしょう。


【特徴3】指標が示す圧倒的な収益力

ベルクスは非上場企業ですが、公開されている採用情報や外部メディアの分析からは、上場企業を凌駕する収益構造が見て取れます。

同社が公表している営業利益率は7.6%超、経常利益率は8.0%以上です【注7】【注8】。業界屈指の高収益企業として知られるヤオコーの営業利益率が約4.6%【注9】、オーケーが約6.4%【注10】であることを考えると、ベルクスの数字はまさに異次元と言えます。

もちろん、ベルクスは非上場であるため、計算基準などを確認できない点などを考慮する必要はありますが、第三者機関であるダイヤモンド・チェーンストア誌の分析でも、売上高純利益率がSM業界でトップクラスの3位(4.7%)と紹介されており、同社の「稼ぐ力」の高さは本物だと言ってよいと思います【注11】


【特徴4】既存店の成長を支えるファンの存在

ベルクスの強さは、既存店舗の成長にも表れています。
2026年2月期の売上高は1,402億円(53店舗)で、1店舗あたりの売上高は約26.5億円にのぼります【注12】。特筆すべきは、直近の数年間で店舗数の伸び(約10%増)を遥かに上回るペースで売上高(約28%増)を伸ばしている点です【注11】【注12】。つまり、既存店の売上が増加しているということです。

既存店の売上が増加を続けているということは、その背景には、客数の増加か、客単価の増加のいずれか、または両方があります。つまり、顧客の厚い支持があるわけですね。

ベルクスの顧客人気の高さは、2024年に行われたTBSラジオ「第5回スーパー総選挙」で、ヤオコー(1位)とオーケー(2位)に次ぐ、3位に輝いたことからもわかります【注13】

ラジオのリスナーからは「上場していたら株を買いたいくらい」「末永く営業してほしいので投票する」といった熱いメッセージが寄せられていました【注14】。企業の存続を願い、応援したいという気持ちは、単なる顧客ではなく、熱いファン心理に近いといえるでしょう。

余談:ちなみに、市川マーケティング研究所のすぐ近くには、ベルクス市川鬼高店があり、その至近距離には、オーケー市川田尻店とヤオコー市川田尻店が(つまり、2年前のスーパー総選挙のトップ3の店舗が)あります。さらに、ベルクスの隣にはコープ市川店があります。このエリアは、個性の異なる、それぞれ特徴的な4店舗がひしめき合う、スーパーマーケット激戦区なのです。

ベルクスが示す未来のスーパーマーケット像

ベルクスの経営モデルは、これからのスーパーマーケットが進むべき一つの解を示しています。それは、「顧客が求める『質』には職人の技と情熱で応え、店舗運営の『効率』は最新のテクノロジーで支える」というものです。

シンプルで揺るぎないこの戦略が、ファンを増やし、「株を買いたい」と言わしめるほどの価値を生み出しています。

顧客から見える表舞台は「専門店の集合」、見えない舞台裏は「最新鋭の工場」――それが、「高収益専門店集団」ベルクスの姿なのです。


〈注〉

1.株式会社サンベルクス「採用ページ(Vision)」https://recruit.sunbelx.com/about/vision(2026年5月15日閲覧)

2.株式会社サンベルクス「事業内容/沿革」https://sunbelx.com/company/history.html(2026年5月15日閲覧)

3.株式会社花徳「会社概要」https://hanatoku.biz/companyprofile/(2026年5月15日閲覧)

4.株式会社サンベルクス「トップメッセージ」https://sunbelx.com/company/message.html(2026年5月15日閲覧)

5.株式会社サンベルクス「サンベルクスのDXについて」https://sunbelx.com/company/dx.html(2026年7月15日閲覧)

6.Teachme Biz「Teachme Biz活用が作業効率化と人時生産性の向上につながった【ユーザーインタビュー/株式会社サンベルクス様 Part.1】」(2024年3月1日公開、2025年4月21日更新)https://help.teachme.jp/hc/ja/articles/29371605288089(2026年7月15日閲覧)

7.マイナビ転職「株式会社サンベルクスホールディングス」https://tenshoku.mynavi.jp/jobinfo-330014-1-23-1/(2026年5月15日閲覧)

8.FutureFinder「株式会社サンベルクスホールディングス」https://futurefinder.net/2027/job/detail?id=5508&active=job(2026年7月15日閲覧)

9.株式会社ブルーゾーンホールディングス「2026年3月期 決算説明会資料」(2026年05月12日公開)https://contents.xj-storage.jp/xcontents/82790/89eea158/dad9/4451/8947/6184af39e89b/20260512111301128s.pdf(2026年7月15日閲覧)

10.日経会社情報DIGITAL「オーケー」https://www.nikkei.com/nkd/company/kessan/?nik_code=0018448(2026年7月15日閲覧)

11.ダイヤモンド・チェーンストアオンライン「超優良ローカルスーパー、サンベルクス、その高収益の秘密とは」(2024年7月11日公開)https://diamond-rm.net/management/businessplan/489808/(2026年5月15日閲覧)

12.株式会社サンベルクス「企業情報」https://sunbelx.com/company/info.html(2026年7月15日閲覧)

13.株式会社TBSラジオ「【速報】リスナーの皆さんの最高のスーパーを決める『第5回スーパー総選挙』 結果発表!」(2024年8月29日公開)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001539.000003392.html(2026年5月15日閲覧)

14.AERA DIGITAL「『スーパー総選挙』“推しスーパー”への愛がすごい 『店員さんが楽しそう』も魅力に」(2024年9月14日公開)https://dot.asahi.com/articles/-/233621(2026年5月15日閲覧)


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