【コラム】付箋だらけの研修テキストが価値を伝えた話

以前、企業の営業担当者や営業支援担当者を対象に、研修を行っていました。データ分析の基本や、データに基づく説得力のある提案営業資料の作成方法、効果的なプレゼンテーションを行うための知識や技術などを身につけてもらうことが目的でした。
さまざまな企業から受講者が集まる講座で、好評だったこともあり、年に何度も実施していましたが、ある受講者の受講理由がとても印象に残っています。
その人は、別のメーカーの営業担当者が、何やら付箋がたくさん貼られた資料をファイリングして、読み返している姿を見かけたのだそうです。
気になって話を聞いてみると、私が担当した上記の研修を過去に受講した人で、その研修テキストを何度も読み返し、実践で活用しながら、あちこちに書き込みをして使い込んでいたそうです。
その姿を見て、「これは、きっと良い講座なのだろう。自分も受けてみたい」と思って申し込んだと話してくれました。
この話を聞いたときは、驚きましたが、非常にうれしく思いました。もう10年近く前のことだと思いますが、今でも強く印象に残っています。
私は、雑誌やウェブメディアに寄稿したり、専門家としてメディアの取材に応じたり(最近では、先月末に時事通信のサイトにコメントが掲載されました)、書籍を共著で出版することもあり、そうした仕事にも、それぞれのやりがいや喜びがあります。
一方、研修のテキストが、講座を終えた後も受講者の手元に残り、実務で繰り返し活用されていたことは、また違った種類のうれしい出来事でした。
この研修に限らず、テキストを作るときには、一度読んで終わりになるものではなく、後から読み返して役に立つものを目指しています。その場限りの知識ではなく、実際の仕事で使え、時間がたっても、AIの普及などによって事業を取り巻く環境が変わっても、価値を失わないものにしたいと考えているのです。
だからこそ、実際に使い込んでくださった人がいたことに、驚きと喜びがあったのだと思います。
また、そのテキストを使い込んでいた人が、私の知らないところで、企業を超えて研修の価値を伝えてくれていたこともうれしいことでした。
自分が作ったものが誰かの役に立つ。それだけでもうれしいことですが、その価値が、作り手の知らないところで別の誰かに伝わり、広がっていく。これも、作り手冥利に尽きます。
自分の仕事が誰かにどう受け止められ、どのように役立っているのか。それを知る機会は、普段、決して多くありません。
だからこそ、思いがけないかたちで知ったこのエピソードは、今でも忘れられないものになっています。
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