【レポート紹介】リアル店舗の価値を再定義する

デジタル化の加速や「地球沸騰化」とも呼ばれる深刻な気候変動など、激変する環境下で、小売企業は事業のあり方の抜本的な再考を迫られています。その中心にあるのは、「ネットで完結する時代に、リアル店舗が存在する意味とは何か」という切実な問いです。

市川マーケティング研究所のレポートシリーズでは、この問いに対し、多角的な視点からリアル店舗の「場所」としての生存戦略や具体的な施策を提示しています。

都市部の店舗網を単なる売場ではなく、即時配送の拠点となる「物流インフラ」として捉え直す視点(Vol.2)や、猛暑から地域の人々を守る「安全な避難所(クーリングシェルター)」としての来店価値の再設計(Vol.13)など、店舗の機能的な価値拡張を論じています。

また、消費者の感情や行動様式にも深く踏み込んでいます。買物行動を、店舗での購入という「点」ではなく、帰り道の余韻まで含めた「線」の時間的体験として捉える考察(Vol.4)を示す一方で、実は一定数存在する「買物はつまらない」と感じている層に向けて、探索負担を最小化すること自体をホスピタリティと捉える「エフォートレス設計」の重要性(Vol.11)を説いています。

さらに、競合店の閉店や改装による営業停止という「日常の断裂」を、強固な顧客習慣を自店へ書き換える好機と捉える戦略的な初動策(Vol.15)のように、実務に直結する知見も盛り込んでいます。

リアル店舗のポテンシャルを模索している方にとって、これらのレポートが事業のヒントになればうれしく思います。
レポートの中で示している視点や施策案を参考にしていただくことはもちろん、「私は違う見方をする」「自分の現場では違和感を覚える」といったリアクションも大歓迎です。各レポートをお読みいただくことが、より深い洞察につながれば、これに勝る喜びはありません。


市川マーケティング研究所 レポートシリーズ Vol.2

ドミナント戦略の再定義
― 店舗網から都市型物流インフラへ ―
2026年4月14日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、従来のドミナント戦略を店舗網の最適化ではなく、都市型物流インフラの構築として再解釈するものである。これまで否定的に捉えられてきたカニバリゼーションを、即時配送を支える拠点密度や、大型店から小型店へ供給を行う「惑星―衛星モデル」の構築に寄与するものと位置づけ、店舗網の価値を単体の収益性からネットワーク全体の機能性という視点で評価する。その上で、今後のドミナント戦略の焦点は、店舗の量的な拡大にとどまらず、地域需要に応じ、提供機能の質をいかに高めるかに移ると論じる。

キーワード:ドミナント戦略、都市型物流インフラ、カニバリゼーション、惑星―衛星モデル、即時配送(クイックコマース)

目次:
1. はじめに
2. ドミナント戦略の再解釈
3. 新たな展開:惑星―衛星モデルの萌芽
4. 結論と含意


市川マーケティング研究所 レポートシリーズ Vol.4

リアル店舗における購買体験の時間的構造
― 「4つのワクワク」から考える来店価値の本質 ―
2026年4月16日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

購買行動を効率化の対象として捉える視点が一般化する一方で、リアル店舗での購買体験には代替しがたい情緒的価値が存在する。本稿はこの体験を時間軸に沿って再構成し、「来店前」「店内探索」「購入決定」「帰り道」の4局面におけるワクワク感を分析する。これらは期待、偶発的発見、選択、所有から使用までの移行に伴う情緒的価値が連続する体験として理解される。購買を「点」ではなく「線」として捉えることで、リアル店舗が提供する時間的豊かさの本質的価値を論じ、今後の来店価値設計の方向性を示唆する。

キーワード:リアル店舗、来店価値、購買体験、セレンディピティ、情緒的価値、ワクワク感

目次:
1. はじめに
2. 買物における時間の両義性
3. リアル店舗におけるワクワク体験の4局面
 3-1.来店前のワクワク――期待と予感
 3-2.店内探索のワクワク――偶然的発見(セレンディピティ的体験)
 3-3.購入決定のワクワク――選ぶ喜び・決める喜び
 3-4.帰り道のワクワク――所有と使用のあいだ
5. 購買体験を「線」として捉える意義
6. 結論


市川マーケティング研究所 レポートシリーズ Vol.11

まいばすけっと躍進の背景を非探索型消費者の視点からひも解く
― 買物を「つまらない」と捉える消費者は何を求めるのか ―

2026年4月21日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、都市部における小型店舗の拡大を、従来の体験価値中心の店舗論とは異なる「非探索型消費者」の視点から再解釈するものである。買物を「つまらない」と捉え、探索そのものを回避する消費者群の存在を仮説的に整理した。この層は、情報収集や比較検討を前提とせず、迅速かつ最小限の情報で意思決定を完了する特徴を持つ。「まいばすけっと」のような小型店舗は、売場規模や選択肢の制御によって探索負担を低減し、こうした行動様式と適合することが示唆される。一方でコンビニは新規性や変化を通じた探索的価値も提供しており、両者の違いは消費者の志向の違いとして整理できる。本稿は、店舗設計が体験の充実と負担の軽減という異なる方向性を持ち得ることを示す。

キーワード:非探索型消費者、エフォートレス消費、小型店舗、店舗設計、まいばすけっと、購買行動

目次:
1. 序論
2. 視点:買物時間の二面性
3. 考察:非探索型消費者という整理
4. 店舗の役割:意思決定負担の低減
5. 提言:エフォートレス設計という選択肢
6. 結論


市川マーケティング研究所 レポートシリーズ Vol.13

地球沸騰化時代における消費者行動の変容と小売業の対応
― 猛暑の常態化が来店価値の再定義を迫る ―

2026年4月28日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、猛暑の常態化が消費者の購買行動と小売業のあり方に与える影響を考察したものである。気候変動による「二季化」の進行により、夏商戦の長期化や猛暑対策商品の需要拡大が進む一方、消費者には来店回避や時間帯変更などの行動変容が生じている。こうした変化に対し、小売業には「需要の再設計」という視点から、購買の時期・場所・受け取り方を見直す対応が求められる。またEC事業者にとっては需要獲得の好機である一方、配送能力や品質管理の課題も顕在化する。猛暑時代においては、来店価値そのものの再定義が重要となる。

キーワード:地球沸騰化、猛暑、気候変動、消費者行動、来店価値、EC

目次:
1. はじめに――「地球沸騰化」が変えるもの
2. 猛暑の常態化と「二季化」の進行
3. 消費者の購買行動への影響――来店回避と需要の変化
4. 小売業に求められる対応
5. EC事業者にとっての機会と課題
6. おわりに――「店に行く意味」を問い直す


市川マーケティング研究所 レポートシリーズ Vol.15

競合店閉店時の新規顧客獲得を考える
― ダイエーいちかわコルトンプラザ店閉店事例から ―

2026年4月29日
著者:鈴木 雄高(市川マーケティング研究所 代表)

本稿は、ダイエーいちかわコルトンプラザ店の閉店に伴う約2か月半の店舗不在期間を事例として、競合店が閉店・休業した際の周辺店舗の新規顧客獲得機会を検討する。消費者の店舗選択は習慣的であり、一旦形成されるとスイッチングには一定のコストが伴うが、競合店の退場により、これら習慣が一時的に断裂し、新たな「いつもの店」の選択局面が訪れる。しかし、周辺スーパーマーケットを観察したところ、この好機を活かすための初回来店者向け施策(売場案内、会員登録、説明知識の活用など)はほとんど展開されていなかった。理論的視点(習慣・スイッチングコスト・サービススケープ)と現場観察を結びつけて、チェーン本部と店舗が協働し、「競合店がいない期間」を、単なる一時的な売上増加以上に、新しい顧客を定着させるチャンスとして活用する必要性を指摘する。

キーワード:新規顧客獲得、競合店閉店、顧客定着、習慣的購買、スイッチングコスト、サービススケープ

目次:
1. はじめに
2. 事例の概要
3. 理論的視座――習慣とスイッチング
4. 観察された現状――施策の不在
5. なぜ好機は活かされなかったのか
6. 提言――店舗と本部での対応
7. おわりに


【レポートの引用について】
レポートの内容は、適切な方法で引用していただくことを心より歓迎いたします。引用の際は、必ず出典として「市川マーケティング研究所」の名称と、該当記事のURLを明記してください。

〈論文の参考文献の記載例〉
鈴木雄高(2026)「欲望の生成と沈黙の構造 ― コンプレックスマーケティング試論 ―」『市川マーケティング研究所 レポートシリーズ Vol.12』https://ichikawa-marketing.com/wp-content/uploads/2026/04/20260422_Ichikawa_Marketing_Lab_Report_Vol12.pdf(公開日:2026年4月22日,閲覧日:[閲覧した日付を入力])

〈ウェブメディアなどでの引用時の記載例〉
出典:市川マーケティング研究所
レポート名:欲望の生成と沈黙の構造 ― コンプレックスマーケティング試論 ―

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https://ichikawa-marketing.com/report/
https://ichikawa-marketing.com/

レポート

公開日:2026年4月14日、最終更新日:2026年5月7日 レポートの位置づけ 市川マーケティング研究所の鈴木は、論文やコラムなどの文章を様々な媒体で発表していますが、2026…