【コラム】同質化するクリスマスのチラシと存在しないシュトーレン

いよいよクリスマスが近づいてきました。
クリスマス直前の今、スーパーマーケット各店のチラシは、いずれもクリスマス特集を組んでいます。
というわけで。市川マーケティング研究所の近所にあるスーパーマーケット6店舗(6チェーン)のチラシをウェブで見てみました。
チェーン名は以下の通りです(五十音順)。
- オーケー
- カスミ
- コープみらい
- ベルクス
- マルエツ
- ヤオコー
いくつかの店舗では紙のチラシを入手しましたが、この記事を書くにあたって、改めてウェブサイトで各店舗のチラシを閲覧しました。なお、近隣には西友もありますが、チラシを発行していないため、対象には含めていません。
順不同で、これら6店舗のチラシにおけるクリスマス特集をざっと見てみましょう。画像は紹介できないので、文字ベースですが。
目次
「今年はおうちで手作りクリスマス」
チラシのクリスマス特集(どのチラシでも枠線で囲んでいます)に、こんな言葉を冠しているのは、"埼玉県を地盤とする食生活提案型スーパーマーケット"です。対象期間は2025年12月17日~22日で、主な商品・料理は――
- ローストビーフ
- ステーキ
- サラダ
- スパークリングワイン
- チキン
- ケーキ
「今年はおうちで」というのは、「普段なら外食」かもしれない、しかし、今年のクリスマスは平日なので、外食ではなく自宅で、ということはスーパーマーケットで必要なものを買って、というふうに、チラシの読み手、受け手の意識の流れをやんわりと促そうとした言い回しかもしれませんね。
「家族で楽しくメリークリスマス」
こんな言葉を掲げているのは、"専門性追求型スーパーマーケット"を標榜するチェーンです。対象期間は2025年12月24日と25日のクリスマス・イヴとクリスマスの2日間、主な商品・料理は――
- チキン
- パエリア
- 寿司
- ピザ
- ワイン
- パスタ
- サラダ
寿司がラインナップされていますね。
あとで述べようと思いますが、「家族で楽しく」というのは、今もなおスーパーマーケットでは「ファミリー層」をメインの顧客層と見ていることが明確なメッセージですね。
「ちょっと早めのChristmas」
"おいしさと安心を、うれしい価格で。"をモットーとするチェーンは、その対象期間が2025年12月20日と21日の、クリスマス直前の土日ということで、「ちょっと早め」に「Chirstmas」(なぜか英語)の食事をしてはどうですか、と提案しているようです。主な商品・料理は――
- ステーキ
- ビーフシチュー
- チキン
- パエリア
- ピザ
- 寿司
- ケーキ
2つ目に続き、寿司、そして、パエリアも。
「ちょっと早めの」と言われても、読む人にピンとこない可能性が高いと思います。中途半端な主張は読み手にほとんど伝わらないので、思い切って「今年は早めに土日のクリスマス」と謳ってもよいかもしれません。
「コスパ抜群!●●●でお得に!クリスマス」
●●●にはチェーン名が入ります。コスパの良さをアピールするのは、"よろこびを分かちあえる食卓づくり"を掲げるチェーンです。対象期間は2025年12月19日~23日、主な商品・料理は――
- ビーフシチュー
- 肉鍋
- すき焼き
- サラダ
- 海鮮鍋
- 刺身
- みかん
- ぶどう
鍋が前面に出ていますね。コスパの良さを謳うべきなのか、それとも、やや大胆に「今年は鍋パdeクリスマス」(流行している"de"の使用には疑問を持っていますが、敢えて書きました)などとして、「鍋で楽しむクリスマス」を押し出す方がよいのか。ディスカッションが盛り上がりそうですね。鍋、そして、フルーツも載っています。
「Merry Christmas」
こんなシンプルな言葉しか載せていないのは、"高品質・Everyday Low Price"で、地域最安値を宣言する、あのチェーン。そもそもチラシの紙面も、地味です。その地味さは、スーパーマーケットのチラシらしくなく、知っている人が見れば、一目で、あのチェーンのチラシであることがわかるほど個性的です。対象期間:2025年12月15日~24日の10日間、主な商品・料理は――
- いちご
- 和牛
- ローストチキン
- スペアリブ
- 本まぐろ中とろ
- ピザ
- フライドチキン
- パエリア
- 寿司
- PBアイス
このチェーンのオリジナルのアイスもクリスマス特集のくくりの中で紹介されていました。実は、上で紹介したあるチラシでは、「ハーゲンダッツ」がクリスマス特集の商品群に含まれていましたが、その扱いは上で挙げたものと比べると劣後しているような位置づけだったので、書きませんでした。こちらのチェーンでは、それなりに優位な扱いを受けていると感じたので、書いています。
(クリスマス特集なし)
なお、"しあわせいかつ。"(この意味は、"地域の幸せの一番近くに"だそうです)を掲げるチェーンのチラシは3種あり、全てを確認しましたが、普段通りの内容で、クリスマス特集は確認できませんでした。
おまけ:「セブンイレブンでそろえて おうちクリスマス」
ちなみに、セブンイレブンはチラシはないのですが、公式ウェブサイトのトップページ最上部の、数秒毎に切り替わって表示されるバナーの1つが、「セブンイレブンでそろえて おうちクリスマス」というものです。
嵐の櫻井翔氏と相葉雅紀氏が赤いサンタ帽をかぶり、セブンイレブンの緑の制服を着ています。クリスマスカラーですね。
バナーをクリックするとクリスマス特集ページに遷移し、そこでは、
- ケーキ
- タルト
- ピザ
- ビーフシチュー
- フライドチキン
- ローストチキン
- サラダ
が紹介されています。「おひとり様クリスマス」とは書かれていませんが、紹介されている商品は、いずれも一人で食べるのにちょうどよいサイズのものばかりです。一人暮らしの人にとっては、「家族で楽しくメリークリスマス」とチラシで謳うスーパーマーケットよりも、セブンイレブンの方が、自分向きの店舗のように感じられるはずです。
「一人暮らし」の割合が極めて高い市川市
ちなみに市川市の世帯人員(1世帯当たりの人数)は、年々減少しており、コロナ禍の前年に当たる2019年(4月までは平成31年、5月からは令和元年)から2024年までの、毎年10月1日時点の数値は、以下のようになっています。
2019年 2.03人/世帯
2020年 2.04人/世帯
2021年 2.03人/世帯
2022年 2.01人/世帯
2023年 1.99人/世帯
2024年 1.97人/世帯
5年間で、2.03人/世帯 から 1.97人/世帯 に減少しています。0.06人/世帯 の減少です。
市川市の世帯人員は千葉県の自治体でもトップクラスの少なさです。世帯数に占める単身世帯(単独世帯、または一人暮らし)の構成比が極めて高い、それが市川市です。
スーパーマーケットでは、チラシの訴求メッセージもそうですが、売場というステージで主役を張っているスター役者の如きスター商品は、ファミリー向けの商品であることが多いはずです。世帯人員が多い顧客は、少ない顧客よりも客単価(来店1回当たり購買金額)が大きく、年間購買金額も大きいため、ファミリー向けの事業を軸にするのもわかるのですが、世帯総数に占めるファミリーの構成比は、全国的に見ても、市川市内全域で見ても、低下の一途を辿っているので、もう少し、単身世帯向けの品ぞろえや、この人たちの買いやすさ、そして何よりも、訴求の仕方を考えてほしいと思うのです。
ところで、「シュトーレン」は?
スーパーマーケット各店舗のチラシを確認したところ、パエリア、寿司、鍋、フルーツ、PBアイスなど、アピールしている商品に特色がみられました。もっとも、チラシの紙面(画像)をウェブサイトでパッと見ても、クリスマスのカラーである赤と緑をあしらっており、フレッシュな印象は受けません。唯一、「Merry Chrsitmas」とだけ書いてあるチラシを除いては。このチェーンは、売場もどちらかというと派手さを感じない、必要最小限の装飾だけをしています。
チラシのクリスマス特集には、様々な商品や料理が掲載されているわけですが、6店舗(のうち特集のあった5店舗。セブンイレブンは含みません)のチラシに掲載されていた、主な商品・料理は、ざっとこんな感じでした。
- チキン(5店舗)
- パエリア(3店舗)
- ピザ(3店舗)
- サラダ(3店舗)
- 寿司(3店舗)
- 刺身(2店舗)
- ステーキ(2店舗)
- ビーフシチュー(2店舗)
- ケーキ(2店舗)
- スペアリブ
- ローストビーフ
- 和牛
- すき焼き
- 海鮮鍋
- 肉鍋
- パスタ
- スパークリングワイン
- ワイン
- ぶどう
- みかん
- いちご
- PBアイス
いずれもチェーン店なので、本部の意向が優先され、個店でやりたいことに取り組める余地は少ないと思いますが、全国有数の梨の産地である市川市のスーパーマーケットならでは、ということでいえば、
- 梨ワイン
- 梨スパークリングワイン
- 梨ゼリー
- 梨ゼリーをメインに据えたフルーツポンチ
などを(チラシには載せられないとしても)売場で大々的に展開したら、梨が大好きな市川市民は興奮すると思いますよ!
それよりも、私が気になったのは、「シュトーレン」が1回も登場していないことです。
※トップの画像はシュトーレンで、フリー画像共有サイト「Pixabay」に掲載されているFrauke Riether氏による画像です。
なぜ、スーパーマーケットのチラシのクリスマス特集には、シュトーレンが登場しないのでしょうか。仮に店舗で販売していたとしても、併設されているベーカリーでの販売で、管理体系が異なるからでしょうか?もし、そうだとしても、チラシには「お店では人気のシュトーレンを販売します」などと明記すべきだと思うのです。
ちなみに、カルディと成城石井では・・・
世界各国の食品を扱うカルディコーヒーファームのオンラインストアのサイトには、「クリスマスの伝統菓子」という特集ページがあり、こんな商品が名を連ねています(サイト閲覧日は2025年12月20日、価格は税込み)。
URL:https://www.kaldi.co.jp/ec/Facet?category_0=110J0202000
- 和のシュトレン 抹茶(1,058円)
- シュルンダー ミニマジパンシュトレン 200g(712円)
- シュルンダー マジパンシュトレン 500g(1,056円)
- シュルンダー オレンジマジパンシュトレン 500g(1,166円)
- シュルンダー マジパンシュトーレン ギフトボックス(1,641円)
- シュルンダー ミニアップルシュトレン 200g(712円)
- ウィックライン マグバディ 200g(624円)
- ウィックライン レプクーヘンスター 175g(602円)
- ウィックライン チェリーチョコレートジンジャーブレッド 175g(777円)
- ウィックライン ドミノシュタイン 230g(1,134円)
- コペルニク トルンスキー ピエルニキ 120g(345円)
- コペルニク ダークチョコレートピエルニキ カタジンキ 134g(537円)
- コルシーニ パネトーネ クラシコ 1000g(4,298円)
- コルシーニ パネトーネ アマレーナ&チョコラート 1000g(4,298円)
- パオロ ラッザローニ パネトーネクラシコ 500g(1,998円)
- パオロ ラッザローニ パネトーネ 100g(645円)
- パオロ ラッザローニ パネトーネ(リモンチェッロクリーム)100g(645円)
- ウォーカー ミニミンスミートタルト#3159 265g(1,250円)
- ウォーカー リッチフルーツプディング #3714 200g(1,890円)
- コルシーニ パンドーロ 1000g(4,298円)
- ショコラトリーキャメル シュトーレン ショコラ 1個(6,311円)
- コペルニク ホワイトチョコレートピエルニキ カタジンキ 138g(537円)
ちなみに、成城石井のウェブサイトにも、「2025年クリスマス」の特設ページがあり、各種のワインはもちろん、こんな商品が紹介されています(閲覧日は2025年12月20日)。
URL:https://seijoishii.com/pages/2025_christmas
- 牛ホホ肉とパルミジャーノのラグーソースペンネ
- ベーコンとほうれん草のキッシュロレーヌ
- 海老とイカと6種野菜のマリネ
- プレミアムチーズケーキ
- 青森産リンゴ丸ごと1個使ったアップルパイ
- シュリンプカクテル(いわゆる小エビのカクテル)
- パテ・ド・カンパーニュ
- ロースハムと3種野菜の彩アスピック
- 4種ドライフルーツのクリームチーズ徳用
カルディも成城石井も、通常のスーパーマーケットと比較しちゃいけませんよ、別物ですからね、という声が聞こえてきますが、そうでしょうか?スーパーマーケット同士、同質化競争をこれからも続けていくということでしょうか?
自信をもって、大胆に攻めて。
「スーパー」な「マーケット」を謡うのであれば、「スーパー」な面をもっともっと磨いて前景化させても良いと思うのです。いや、各社さん相当に磨き上げていると思います。しかし、どうでしょう、謙虚といいますか、控え目にも見えます。
ドン・キホーテがいつも自信に満ちた打ち出し方でPB(現在の同社では、企業のモノという位置づけのプライベート・ブランドではなく、顧客のモノとしてのピープル・ブランドという意味です)をアピールしていますよね。是非、自信をもって、いかに素晴らしい商品であるかをアピールしてほしいです。
シュトーレンを、近所のスーパーマーケットで販売してくれたら、当研究所でも購入して食したいと思います。
