【コラム】やっていなかった場合の自分と比較する「反実仮想」のすすめ――祝!筋トレ継続10周年

本日、2026年3月27日は、私にとって、大きな節目となりました。

10年前の今日、2016年3月27日に始めた筋トレを毎日継続し、昨日で丸10年となりました。
今日は10周年、11年目のスタートです。

10年続けてきたからといって、アスリートのような逞しい肉体を誇れるわけではありません。むしろ、筋トレをしているのに、中年らしさ全開の体型であり、トホホと言えなくもないのですが、10年間の成果、10年目の到達点には、それなりに満足しています。

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ところで、筋トレと書きましたが、ジムに通っているわけでもなく、毎日やっていることといえば、自室や公園でできる、軽い筋トレだけです。

仕事柄、言葉の定義を明確化しておきたい私は、軽い筋トレを毎日続けると決めた時、次のように定めました。

毎日続ける筋トレのルール

種目は何でも良いこととする(腕立て、スクワット、腹筋、背筋、プランク、ゴムを引っ張る等)
1種目を20回実施して「0.5セット」とする
「1セット」実施して「筋トレを1セットやった」とする

出所:筆者作成。

定義があいまいだと記録したり管理することができません。
複雑なルールだと覚えられません。
難易度を上げると継続できません。

そこで、上のように、言葉を定義し、ルールは簡単にし、難易度は低くしました。

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10年も続けているわけですが、鏡に映るのは相変わらずの「等身大の自分」であり、傍目にはその成果はほとんど見えないでしょう。では、続けてきた意味はあったのかというと、私は「あった」とも「なかった」とも言わず、このように言います。

この習慣を身に付けることで、自然に、こんな風に考えるようになりました。

筋トレを続けていても、この程度である。ということは、もし筋トレを続けていなかったら、もっと良くない状態だったはずだ、と。

私は、この思考を、「反実仮想に基づく自己肯定」と呼んでおり、言いやすいように縮めて「反実仮想の自己肯定」とも言っています。

「もし、この10年間、何もしていなかったら?」と、現実には起こらなかった「別の自分」を想像し、現在の自分と比較する、この思考により、今の自分よりずっと不健康で、気力も体力も衰えた「もう一人の自分」が容易に想像できます。

劇的な変化はしていなくとも、体力を維持し、不健康化にブレーキをかけられていると思うのです。

目に見える成果ではなく、「あり得たかもしれない悪い状態」を基準にすることで、続けてきたことの価値を確認する、目に見えないマイナスの回避が、10年間の最大の成果であると考えています。

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ところで、経営やマーケティングの現場では、しばしば「サンクコスト(埋没費用)」の罠が語られます。

「これまで注ぎ込んだ資金や時間がもったいないから、赤字でも撤退できない」と考えてしまう、つまり、過去に縛られて未来の損失を拡大させる、いわば負の執着です。

私が筋トレに費やした10年という長い時間は、ともすれば、やめるのがもったいないという呪縛となり、サンクコストにもなりえます。もちろん、筋トレをするよりも別のことをした方が、自分の健康に良い効果がある、あるいは、自分の人生をもっと豊かなものにするということが明白なのであれば(筋トレを続けていてはそれができないという、トレードオフの関係にあるのであれば)、いっそ潔く筋トレをやめても良いかもしれませんね。

結局のところ、大切なのは「目に見えない成果」をどう評価するかという一点に尽きます。これは、経営やマーケティング上の意思決定においても同じことが言えるでしょう。

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マーケティングの世界における、ブランドへの長期的な投資や地道な顧客との関係構築も、短期的なROI(投資利益率)としては数値化しにくいものです。四半期ごとの売上には直接現れず、だからこそ、継続する意味があるのかという問いが繰り返し浮かび上がります。

そのとき、もしこの活動をしていなかったら今どうなっていたか、という、「失われていたはずの価値」に目を向けてみます。顧客からの信頼やブランドの想起率は、積み上げなければ存在しなかったものです。

「過去の投資」を「現在の資産(現状維持)」として再定義できれば、サンクコストは、未来を支えるメンテナンス費用と位置付けることも可能になります。

私は、反実仮想を、単なる自己満足のための思考ではなく、長期的・無形の投資に対して適切な評価軸を与えるためのツールになると考えています。

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などと、理屈っぽく、概念を手のひらの上でこねくり回すような記述をしましたが、数字で評価しづらいことを、どのように考えるか迷う場合には、実際には起こっていない(現実に反する=反実)ことを想像し、それと現実を比較する、「反実仮想」の思考を取り入れてみてください。

「反実仮想」は、私生活でもビジネスにおいても有用な思考法だと思います。

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