【おしらせ】論文「消費者の食生活スタイルに関する実証的研究」が掲載されました|『流通情報』2026年5月(No.580)

市川マーケティング研究所の鈴木雄高(以下、私)が執筆した最新論文が、流通とマーケティングの専門誌『流通情報』2026年5月号に掲載されました。

冒頭の画像は、『流通情報』の実際の誌面からの引用です。論文のアブストラクト(概要)とキーワードを以下に掲載します。

消費者の食生活スタイルに関する実証的研究―自炊と中食の併用行動に着目したクラスター分析による類型化―
Understanding Diversifying Food Lifestyles: Typifying Consumersʼ Hybrid Food Behaviors via Cluster Analysis

アブストラクト:
 本研究は、現代日本における自炊と中食の混在実態を捉えるべく、消費者の食生活スタイルを類型化し、その構造的特徴を明らかにすることを目的とした。4,352名を対象とした調査データに基づき因子分析を行った結果、「中食活用」「計画的調理」「食充実」「健康管理」の4因子を抽出した。これらを基にクラスター分析を実施したところ、日本の食生活の基盤を成す「自炊志向型」のほか、「食低関与型」「健康合理型」、そして中食を高度なマネジメント手段として自炊と補完的に活用する「自炊・中食併用型」の4群が特定された。本結果は、自炊と中食を対立構造ではなく、ライフスタイルに応じて最適化する「戦略的消費者」の変容を示唆しており、小売業における部門横断的な提案の重要性を提示している。

キーワード: 食生活スタイル(Food Lifestyle)、クラスター分析(Cluster Analysis)、中食活用(Use of Home Meal Replacement / HMR)、認知的家事(Cognitive Household Labor)、ハイブリッド食行動(Hybrid Food Behavior)

当論文について、3月に書いた記事で触れていました。以下の引用箇所で「近い将来、発表される予定の拙稿」とあるのが、今回の論文です。

ところで、近い将来、発表される予定の拙稿では、生活者の日常の調理や買物に対する考え方と行動(特に、惣菜などの「中食」の活用)に注目し、クラスター分析によって生活者を類型化しているのですが、執筆しながら、世帯の家事を中心的に担っている女性の存在感が、予想以上に大きいことに驚きました。拙稿は消費者行動の文脈で書いたので、家族社会学的な論じ方はしていないのですが、「認知的家事」(身体的な家事に付随する、非身体的な作業・思考)を含む家事全般が、世帯において女性にかなり偏重しており、性別役割分業の価値観が根強いのでしょう。

根本さんが提唱した「買物をする男性を対象としたマーケティング」=「ショッピングマン・マーケティング」には、男性市場の開拓といった意味合いもあったでしょうが、世帯における家事を男女で分担することを推進しよう、伝統的な性別役割分業からの解放を目指そう、という生活者としての誠実な動機もあったのだと思います。

現在は、当時と比べれば、家事の分担が進んでいるとは思いますが、必ずしも十分ではありません。数年前から「見えない家事」という言葉が注目されたように、家庭運営に不可欠な細かなタスクや、献立の決定・在庫管理といった「認知的家事」の負担は、依然として男性からは不可視な領域に留まっています。この「見えづらさ」こそが、実質的な分担率の上昇を阻む見えない壁になっているのかもしれません。

出所:【おしらせ】論文「買物における時間意識の分析」が掲載されました|『流通情報』2026年3月(No.579)(2026年3月12日公開、2026年5月11日更新)

この論文は、『流通情報』2026年5月号の特集「変わる消費者を多角的に読む」を構成する論文のうちの1本です。本特集に含まれる論文やインタビューは以下の通りです。

●特集 変わる消費者を多角的に読む

特集にあたって
緒方 務
公益財団法人流通経済研究所 流通・店頭部門 部門長

公的統計から見る消費の状況
谷道 正太郎
総務省統計局 消費統計課 課長

インタビュー:イオントップバリュの商品戦略
髙橋 幹夫
イオントップバリュ株式会社 取締役 商品開発本部長
聞き手 中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学 名誉教授

インフレ下の買い物意識の変化と注目ポイント―買い物意識調査「消費者の業態・店舗選択に関する調査」より
池田 満寿次
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員

商品構成と価格ポジションに基づく小売業態の再分類と購買行動の変化―新業態区分による把握の試み―
荒瀬 智仁
公益財団法人流通経済研究所 研究員

消費者の食生活スタイルに関する実証的研究―自炊と中食の併用行動に着目したクラスター分析による類型化―
鈴木 雄高
公益財団法人流通経済研究所 特任研究員/市川マーケティング研究所 代表


『流通情報』は、流通・マーケティング分野の研究を行う公益財団法人流通経済研究所が1967年に創刊した機関誌で、私の論文は、今回の「消費者の食生活スタイルに関する実証的研究―自炊と中食の併用行動に着目したクラスター分析による類型化―」を含め、これまでに18本掲載されました。

私の手元には、40年前の1986年10月号(財団設立20周年記念特集号)をはじめとする同誌のバックナンバーが数多くあり、長年この分野の知見を深める糧としてきました。

参考:寄稿・出演・コメント・出版など

正直なところ、これまでに私が執筆した論文の中には、時代の流れに押し流されて色あせてしまったものもあります。一方で、今読んでみても、そこで扱った問いそのものは、なお現在性を失っていないように思われるものもあります。

また、論文ではありませんが、10年前に執筆したコラム「『10分どん兵衛』ブームに見る、新しい消費者行動とマーケティング〜コミュニケーション消費、エクストリーム・ユーザー、デジタル・マーケティング〜」(公益財団法人流通経済研究所コラム、2016年3月2日)は、現在では元記事を閲覧できないものの、Wayback Machineによるアーカイブで読むことができます。

当時の「流行」を捉えたつもりで書いたものですが、現在読み返してみると、意外にも、現代の消費者行動やマーケティングを考える上でも一定の参考になりうる強度を保っているように感じました(レポートシリーズVol.17で参照しています)。


参考:
市川マーケティング研究所 レポートシリーズ Vol.17
ロングセラー商品の再活性化をめぐる試論 ― 設計された意味と生活文脈の衝突 ―
https://ichikawa-marketing.com/report/#vol-17

本稿は、ロングセラー商品が停滞を打破し、再び市場で存在感を高めるメカニズムを、「設計された意味」と「生活文脈」の衝突という視点から考察する試論である。事例分析を通じて、再活性化の契機は企業の設計図の内側ではなく、消費者が生活の文脈において独自に書き換えた意味の中にこそ生まれることを提示する。この「意味の書き換え」には、消費者の先行を企業が追認する経路と、企業が生活文脈の変化を先読みし自ら再定義する経路の二つのパターンが存在する。さらに、SNS時代における消費者の能動的な意味創出が、企業とのあいだに共創的な対話を促し、ブランドの在り方をいかに変容させているかを論じる。

キーワード:設計された意味/生活文脈、意味の書き換え、消費者起点と企業起点、文脈探索、ロングセラー商品の再活性化

目次:
1. はじめに
2. 「設計された意味」の限界と消費者の独自解釈
3. 書き換えの二つの経路――消費者起点と企業起点
4. 文化による「象徴的価値」の書き換え
5. 意思決定の民主化と「10分どん兵衛」の衝撃
6. 実務への示唆――「兆しの発見」としてのマーケティング
7. おわりに

取り上げている事例:サントリー天然水、花王のメリット、ネスレのキットカット、ロッテのガーナ、日清食品のどん兵衛