【アンケート調査】手軽にできるからこそ大切なこと
アンケート調査の民主化
アンケート調査を実施するハードルが下がっています。
無料のGoogleフォームから、低価格のセルフリサーチ、調査会社のサポートが手厚い高価格なものまで、インターネット上でお客様などの意見を集める方法は多岐に渡っています。
大手消費財メーカーのように、長年、マーケティングリサーチを実施してきた企業もあれば、これまでは調査を実施ていなかったものの、最近になり必要に迫られてアンケート調査を行うようになった事業者もあることでしょう。
Googleフォームのような無料のものも含みますが、自分で調査画面をつくるセルフ型のリサーチツールは、優れたインターフェイスで、直感的に操作できます。初めて調査画面を作ってみた、という人でも、誰に教わることもなく、あっけないほど簡単に画面をつくることができるかもしれません。
インターネット上で回答してももらうものだけでなく、紙の質問票を自分で作ってアンケート調査を実施するケースもあるでしょう。それこそ、インターネットで調査方法を調べて、見様見真似で調査設計らしきことをできてしまいます。
見映えの良い調査画面が落とし穴かもしれません
でも、ちょっと待ってください。
出来上がった調査画面や紙のアンケート用紙は、「それらしく」見えるものですが、それは、作者の調査設計スキルが高いから、ではないかもしれません。使用したツールが優れていたから、実はアラの多い質問票だったとしても、見映えがよく出来上がるのです。
各種ICTツールの進歩と普及で、これまでは難しかったことが、簡単に、スピーディーに行えるようになってきています。生成AIによる文章や画像、動画、音楽などの作成が顕著ですが、アンケート調査画面の作成も、これに含められるでしょう。
実施のハードルが下がっているからこそ、アンケート調査の基本を学び、押さえるべきところ(=キモ)をしっかりと押さえておく必要があります。
目的 > 道具・手段・手法
ツールは、目的を達成するために選ばれ、使われる道具、手段(手法)です。
いくら「この質問は鋭いね」と思われるような質問を盛り込んだ調査画面や、紙の調査票を作ったとしても、その「鋭い質問」に対する回答を知ったとしても、目的には何の影響もない場合、それは、余計な(無駄な)質問かもしれません。
人に意見を求めて、質問者が尋ねる場合は、質問をする順番は厳密でなくても構いませんよね。ある質問への回答を受け、質問者が、「少し前に聞いた質問の続きですが」と、遡って質問することもできるわけです。少数の対象者に、深く、じっくりと話を聞く、デプスインタビューという方法などでは、このようにして深堀りします。
しかし、インターネット上に調査画面を設けたり、紙に質問票を印刷したものを使ってアンケート調査を実施する場合は、
・設問の数
・設問の並び順
・質問の粒度(どこまで細かく聴くか)
などを、目的を達成できるように、回答者の負荷が大きくならないように、コストが予算を大きく超過しないように、など、考慮すべき条件、制約の中で、決定することが求められます。
あれも知りたい、これも聞きたい・・・けれど
アンケート調査を設計するお手伝いをする際、ご依頼者様にヒアリングをすると、あれも聞きたい、これも聞きたい、というふうに、質問したい項目がどんどん増えていくことがあります。ああ、お客様のことを理解するために、色々な角度から質問したいのだな、と感心することもありますし、こちらが学ぶことも少なくありません。
とはいえ、1回の調査で聴取できる項目は、上述のような制約の中では限られるものです。目的を達成するために必要な質問であるか、知りたいことを知ったとして、今後のアクションにどのように役立てられるだろうか、など、考えなくてはならないことは多くあるものです。
調査は役に立たない?ちょっと待って!
つい、長々と綴ってしまいましたが、アンケート調査を、以前と比べ、手軽に素早く行えるようになったからこそ、調査設計(目的にあった、そして、調査実施後にデータをどのように扱うかも踏まえて、質問票を作る工程)をしっかり行うことの重要性を強く訴えていきたい――長年、マーケティングリサーチ業務に携わってきたからこそ、そんなことを思っています。
簡単にできるからやってみた!
↓
イケてる質問票ができた!
↓
調査を実施してみた
↓
(結果を見て)あれ?思ったのと違う
↓
アンケート調査って役に立たないね、もうやめよう
と、なるかもしれません。しかし、そもそも、アンケート調査は、目的にあった方法だったのでしょうか。また、設問の文言や順番は適切だったのでしょうか。往々にして、アンケート調査の上流工程である、目的の確認と調査設計が、丁寧でない(雑である)ことが、期待したような結果にならない原因になりがちです。
アンケート調査を実施したい、または、もう実施したのだけれど、行き詰っている、相談したい、という方は、お気軽にお問い合わせください。