【おしらせ】日清食品のD2C戦略に関するコラムが公開されました

市川マーケティング研究所の鈴木は、forUSERS株式会社様が運営するブログ・メディアで記事を執筆しています。

ecAction(イーシーアクション):著者ページ
https://ecact.jp/author/suzuki/

先月(2025年11月)は、ecActionに4本の記事が公開されました。

  1. ライフネットスーパーの成長の軌跡と将来展望
  2. 「食品メーカーのEC戦略」メリット・デメリットとカゴメの取り組み
  3. トライアルが実現する「流通情報革命」:共創とDXで切り拓く小売の新時代
  4. 「食品メーカーのEC戦略」日清食品D2C事業の革新

これらのうち、1、2,3は既に「おしらせ」で紹介しています。

本稿では、冒頭に画像※を掲載した日清食品の自社ECサイト「日清食品グループオンラインストア」での取り組みについて、同社にとって、D2C=Direct to Consumer の戦略が全社的に大きな意味を持つようになってきていることなどを解説した、4を紹介します。

※冒頭の画像のうち、上の画像の出所は、日清食品グループオンラインストア「ブーケショップ」(閲覧日:2025年11月28日)、下の画像の出所は、日清食品株式会社ニュースリリース「『プラントベースうなぎ 謎うなぎ』(7月3日数量限定発売)」(公開日:2025年6月30日、閲覧日:2025年11月10日)です。

「食品メーカーのEC戦略」日清食品D2C事業の革新(2025.11.30)

「食品メーカーのEC戦略」日清食品D2C事業の革新 | ecAction(イーシーアクション)

国内大手食品メーカーの日清食品は、自社ECサイトでも店頭と同様の買いやすさを実現し、ECサイトを新商品の先行販売による実験場としても位置付けています。2025年にはダ…

食品スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアの店頭で日清食品の「完全メシ」を見たことがあるかもしれません。もしかすると、買って食べたことがあるかもしれません。あるいは、ECサイトで定期購入しているかもしれませんね。「冷凍完全メシDELI」を。

日清食品の「完全メシ」は、2010年代にフードテックの発展を背景に、アメリカなどで話題を呼んだ「完全栄養食」の一種で、2021年に開発が始まり翌2022年に発売されたブランドです。この「完全メシ」は、当初は自社ECサイトのみで発売され、限られた販売方法であるにもかかわらず大きなセールスを記録した後、店舗チャネルでの販売が始まったという経緯があります。

「完全メシ」は、2025年4月時点で、シリーズ全体で約60カテゴリー・200以上のメニューを展開しており、シリーズ累計出荷数は5,000万食を突破、ブランド認知率は50%を超えているそうです(情報出所:IT media ビジネスonline「日清『完全メシ』累計5000万食を突破 担当者が明かす人気のヒミツ」公開日:2025年9月28日、閲覧日:2025年10月20日)。

増加する「完全メシ」のラインアップ

画像出所:日清食品株式会社「完全メシ ブランドサイト」(閲覧日:2025年11月29日)
※キャプチャしたものを加工。

「完全メシ」のうち、「冷凍完全メシDELI」は、一部の店舗でも販売されているという情報を目にしましたが、原則としては日清食品のECサイト「日清食品グループオンラインストア」での販売に限られており、ユーザーが定期購入することが前提となっています。

コラムで解説していますが※、私(鈴木)は、自社ECサイトというチャンネルを持ち、D2C事業を展開することで、既存の主要ブランド(カップヌードル、チキンラーメンなど)とは全く異なる新機軸を打ち出したブランド「完全メシ」からの新商品販売や、顧客の反応を踏まえた改良を、素速くおこなうことができている、と分析しています。

今年(2025年)4月には、通販事業(D2C事業)を分社化し、新たに「日清食品ダイレクトマーケティング」という会社を立ち上げています。

「日清食品ダイレクトマーケティング」公式ウェブサイト

画像出所:日清食品ダイレクトマーケティング株式会社公式ウェブサイト
キャプチャ(閲覧日:2025年11月29日)。

コラムでは、日清食品のD2C事業事例から、食品メーカーがD2C事業に取り込む意義として、以下の5点を挙げています。

  1. 顧客を「個」として理解できる
  2. 店舗チャネルでは難しい販売方法を実践できる
  3. 新商品テストを低リスクで実施できる
  4. 店舗以外の販路を持つことで新たな収益源を確保できる
  5. D2Cで得た知見を店舗チャネルへの提案に活用できる

このような分析を行った上で、コラムでは最後に「まとめ―D2Cは食品メーカーにとって欠かせない事業へ」として、次のように述べています。

本稿で取り上げた日清食品のD2C戦略は、

  • 顧客と直接つながる接点の設計
  • 実験場としてのEC活用
  • 完全メシに象徴される新規事業創出
  • 分社化によるD2Cの本格的な事業化
  • といった複数の要素が結びついた総合戦略です。

国内のEC市場拡大、健康志向の高まり、時間効率重視の傾向(タイパ志向)の浸透は、今後もさらに進むと考えられます。こうした変化は、食品メーカーがD2Cに取り組む意義を一層高め、新たな顧客接点や販売チャネルの開拓を後押しするでしょう。

また、企業が顧客のニーズを正確に把握し、柔軟に対応するには、自社ECサイトを通じた販売や顧客とのコミュニケーションが理にかなっています。

出所:ecAction「『食品メーカーのEC戦略』日清食品D2C事業の革新」(公開日:2025年11月30日、閲覧日:2025年12月1日)

ぜひ、チェックしてみてください。

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〈注釈〉

※コラム内では次のように考察しています。

「完全メシ」が短期間で多カテゴリー・多品目へと品ぞろえを広げられた背景には、主に自社ECサイトで販売されていることが挙げられます。ECを通じて顧客の購買データや評価情報を大量に取得し、それらを商品改良や新商品の開発に活用できる――まさにD2Cならではのメリットが最大限に生かされていると考えられます。

出所:ecAction「『食品メーカーのEC戦略』日清食品D2C事業の革新」(公開日:2025年11月30日、閲覧日:2025年12月1日)